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第374話 拒絶
(秋哉side)
看護師に呼ばれて俺たちは病室に急いだ。
病室が近付いて来ると、何か声が聞こえてきた。
『嫌だ!離して!』
『大丈夫ですから!落ち着いてください!』
病室の中からそう声が聞こえてくる。
一つは緋桜の声で、俺はすぐさま病室に駆け込んだ。
病室に入ると、看護師が二人暴れる緋桜を押さえ付けている。
緋桜は泣いて怯えていた。
「先生、連れて来ました!」
俺を連れてきた看護師が担当医に告げる。
「あぁ、良かった」
俺たちを見た担当医がホッとした表情を見せた。
「そんな事より、今すぐあの人たちを緋桜から離して!」
そう言うと、担当医が困惑する。
「で、ですが……」
俺の言葉に看護師たちも戸惑ってる。
多分、この状況で離していいのか迷ってるんだろう。
「大丈夫です。後は俺に任せて少し離れててくれませんか」
そう言うと、担当医が看護師たちに合図を送った。
担当医の合図で看護師たちが渋々緋桜から離れて俺の所まで下がってきた。
「目を覚ましたら、突然暴れだしたんです」
そう言いながら看護師たちは本当に大丈夫かという視線を俺に向ける。
「分かりました」
看護師たちは入り口付近にいる医者に駆け寄って何か話始める。
緋桜を見ると、体を縮込ませて震えている。
「緋桜」
俺が声を掛けるとビクッと緋桜の体が大きく跳ねる。
少し近付くと、緋桜が更に震えた。
「緋桜」
もう一度名前を呼ぶと、緋桜の瞳が揺れて俺を捉える。
でもすぐに目を剃らしてしまうから俺を認識してるのか分からない。
「緋桜」
俺はもう一度名前を呼んで、緋桜に手の届かないギリギリの位置で緋桜の目線に合う所までしゃがんだ。
そうすると、ようやく緋桜と目が合った。
「……しゅ…や…?」
「うん」
緋桜は俺の顔を見た途端、ボロボロと涙を流す。
「緋桜!?」
突然泣き出した緋桜に手を伸ばすと、緋桜はビクッと体を跳ねさせる。
俺はその反応を見て、緋桜に触れる直前で手を止めた。
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