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第375話

(秋哉side) 緋桜はボロボロと涙を流して震え出す。 「……ごめん、なさい…………ごめんなさい…………」 突然謝りだす緋桜に、俺も戸惑った。 「緋桜、大丈夫だから落ち着いて」 そう言ってもう一度手を伸ばすと、緋桜は体をビクつかせて縮こまる。 俺は緋桜に触れる事が出来なかった。 なんとなく、そんな予感はしてた。 スタッフルームで手を払われたとき、俺だと分かってないからだと思ってた。 でも今は俺の事を認識してる。 これは俺への、拒絶だ。 俺は怯えて震える緋桜から少し距離を取った。 「緋桜」 俺が名前を呼ぶと、緋桜の体が揺れる。 「……大丈夫だよ、俺はこれ以上近付かないから」 そう言うと緋桜が顔を上げた。 緋桜は困惑したような表情で見てくる。 俺にはその表情が何を意味してるのかは分からない。 「もう少し休んでいた方がいい」 そう言ってまた少し緋桜から離れる。 「……しゅ…や……?」 俺を見る緋桜の瞳が揺れる。 「少し休んで、落ち着いたころにまた来るから」 そう言って俺は病室を出た。 病室の扉を閉めて、俺は息を吐いた。 笑顔を作ったつもりだけど、上手く笑えてた自信がない。 「……秋哉さん」 さっきの状況を見ていた佐々木が心配そうに声を掛けてくる。 「……悪い…少し外の空気を吸ってくる」 『何かあったら連絡して』とだけ佐々木に伝えて、俺はその場を離れた。

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