380 / 452
第376話
目を覚ましたら知らない人たちに囲まれていて怖くて堪らなかった。
近付いてほしくなくて、触ってほしくなくて、差し伸べられる手を拒んだ。
目の前が真っ暗になって、何も見えなくてただ怖かった。
そんな中で秋哉の声が聞こえた。
真っ暗だったのか徐々に開けて秋哉の顔が見えた。
秋哉の顔を見た瞬間、罪悪感に襲われた。
秋哉だけだったのに……
俺は青木さんを拒むことが出来なかった。
そう思ったら涙が溢れてきて、俺は無意識に謝っていた。
そんな時に視界に手が映った。
その手が秋哉の手だって事は分かっていた。
分かっていたのに、その手が無性に怖かった。
体が震えて、強張る。
何で……?
これは秋哉の手なのに…
『……大丈夫だよ、俺はこれ以上近付かないから』
そう思っていると秋哉からそう聞こえてきた。
俺は咄嗟に秋哉を見る。
その時の秋哉は、悲しそうな顔で笑っていた。
秋哉がさっきより距離を取ってるのに気付く。
……嫌だ。
『もう少し休んでいた方がいい』
そう言って秋哉がまた離れていく。
嫌だ!行かないで!
徐々に離れていく秋哉を引き止めたいのに体が動かない、声が出ない。
『落ち着いたころにまた来るから』
そう言って秋哉は病室の外に出る。
嫌だ!お願い、行かないで!
俺を置いていかないで!
いくらそう思っていても秋哉には届かなくて、閉まる扉で秋哉が見えなくなった。
その瞬間、涙が溢れてきた。
それはボロボロと溢れてきて、止まることはなかった。
ともだちにシェアしよう!