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第377話
(秋哉side)
俺は皆から離れて一人で病院の敷地内にある中庭まで来ていた。
外はもう薄暗くなってきていて、中庭には人気がない。
俺はその中心にある一本の木に拳を叩き付けた。
何で!?
何で緋桜が!?
俺はその場に座り込む。
色々な感情が渦巻いてて頭が着いていかない。
緋桜に拒絶されたショック。
青木への怒り。
緋桜を守れなかった自分への怒り。
そんな感情が渦巻いてて、もうどうしていいか分からない。
そう思って、俺は膝を抱えた。
「…秋哉」
どれくらい経ったのか、佐々木が心配そうに覗き込んでくる。
「大丈夫か、少しは落ち着いたか?」
そう聞かれても答えることが出来ない。
落ち着く訳がない。
まだ頭の中はグチャグチャで整理が出来てない。
何で。
どうしてあの時。
そんな後悔ばかりが頭の中をグルグルしていた。
「緋桜くんの担当の医者が話をしたいって言ってる」
『無理そうなら俺が聞いてくるけど』と佐々木は言う。
「……大丈夫、行くよ」
そう言って立ち上がろうとすると、佐々木が手を差し伸べてきた。
俺がその手を取ると、自分の手に痛みが走った。
見ると傷が出来ていて血が滲んでいた。
……さっき木を殴ったところ、傷になってたんだな……
気付かなかった……
「お前、その傷どうした!?」
手の傷に気付いた佐々木がそう言って驚いた顔をする。
「…何でもない、ぶつけただけ」
そう言うと、佐々木はため息をついた。
「後でちゃんと手当てしろよ?」
「………分かってる」
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