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第379話
(佐々木side)
膝を抱えてうつ伏してる秋哉を見て、一瞬泣いてるんじゃないかと思った。
「……秋哉」
名前を呼ぶと秋哉が顔を上げた。
………泣いてない、か
顔を上げた秋哉は泣いてなくて一瞬ホッとしたけど、大丈夫そうでもなかった。
緋桜くんの担当医が話をしたいと伝えると、秋哉も行くと言って着いてきた。
ナーススーテーションに行って、そこに居る看護師に説明すると別の部屋に案内された。
その部屋には既に緋桜くんの担当医が待っていた。
担当医の話は、緋桜くんの様子からカウンセリングを受けた方がいいと言う提案とこれからの事。
カウンセリングは緋桜くんがどう反応するかは分からないから返事は保留にした。
これからの事というのは、退院してからの事。
あれだけ人を拒否するのは、当然日常生活にも影響がある。
もし可能なら接しても大丈夫な人を探してその人にしばらくお願いする事を提案された。
そうすれば緋桜くんのストレスも減って改善に向かうかもしれないと担当医は言った。
一通り話終えて俺たちは廊下に置いてあるソファに座っていた。
横に座る秋哉を見ると何か考えてるようだけど、何を考えてるかは分からない。
「……どうするつもりだ?」
そう聞いてみるけど、秋哉からの返事は返ってこなかった。
あの医者が言ってたことは一律あると思う。
一時的にでも緋桜くんが平気だと思う人にみてもらう方がいい。
俺はまだ試してないから分からないけど、秋哉は拒絶されてる。
もし俺の事が平気だとしても、俺の側には常に秋哉が居る。
緋桜くんを家に連れていく訳にはいかない。
となると、緋桜くんは家を出ていくことになる。
それは秋哉も理解している。
秋哉はそれでも良いのか?
そう思って、俺は秋哉に視線を向けた。
「ゆかりさんたちに連絡する」
黙ってた秋哉が突然そう口にする。
「え?」
「緋桜は実家に帰す」
「でもまだ緋桜くんが二人を平気かどうかは……」
「多分、大丈夫だと思う」
『これは俺の勘だけど』と秋哉は言う。
秋哉は自分の勘は当たると自信を持ってる。
これは秋哉自身が緋桜くんの両親なら大丈夫だって既に確信してるって事だ。
「………秋哉はそれで良いのか?」
「……緋桜がそれで落ち着けるなら、俺はそれでいい」
そう言って秋哉は笑う。
俺はその顔を見てため息をついた。
……まったく、今にも泣きそうな顔をしてるくせに。
「……分かった」
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