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第382話
秋哉が離れていってしまう……俺がこんなになったから。
そう思ったらまた涙が出てきた。
秋哉を拒絶してるわけじゃない。
側に居て欲しい。
頭では分かってるのに、体が反応してしまう。
秋哉に触られると思うと体が強張る。
何で俺、こんな……
そんな事を考えていると、ドアがノックされた。
『緋桜』
そう秋哉の声が聞こえてきたけど、反応出来なかった。
秋哉が病室に入ってきたのが分かる。
でも秋哉の顔が見れない。
そう思って俺は布団に潜り込んだ。
秋哉は話があると言うけど、顔が出せない。
しばらくすると、秋哉からため息が聞こえてきた。
…秋哉に呆れられた?
そう思うと胸が苦しくなる。
俺は胸元をギュッと握った。
『明日ゆかりさんと優さんが来る。緋桜は明日、二人と実家に帰るんだ』
俺は布団から出れないでいると、秋哉が確かにそう言った。
俺はそれを聞いて思わず飛び起きた。
どういうことと聞くと、秋哉はもう一度同じ事を言う。
母さんたちと居た方が落ち着けるだろと秋哉は言う。
……秋哉は何を言ってるの?俺が一緒に居たいのは秋哉なのに。
秋哉も一緒かと聞くと、行かないと言われた。
……俺が秋哉を拒絶したから、俺、追い出されるの?
……嫌だ。秋哉と一緒に居たい、離れたくない。
嫌だと言ったら、秋哉が『俺に怯えてるでしょ?』と言う。
……違う。
俺は否定したくて首を振る。
そんな俺に秋哉がゆっくり近付いてきて手を伸ばした。
俺はその手に体が跳ねる。
………何で俺。
『ほら、震えてる』
そう声がして秋哉を見ると、秋哉はまた俺から距離を取る。
涙が溢れて止まらなかった。
『ゆかりさんと優さんならきっと大丈夫。二人なら緋桜も平気だと思うから』
違う……俺は秋哉がいい。秋哉の側に居たいのに……
そう思っていても声が出ない。
その内秋哉からため息が聞こえてくる。
『今日はもう遅いから、詳しい話は明日ゆかりさんたちが来てからにしよう』
そう言って秋哉が離れていく。
やだ……違うのに……側に居て欲しいのに。
俺は離れていく秋哉を必死で呼び止めた。
その声で振り向いた秋哉が笑顔を見せる。
泣きそうで、悲しそうな笑顔。
『大丈夫だよ、緋桜は何も心配しなくていい』
そう言う秋哉に、俺は動く事が出来なかった。
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