391 / 452
第387話
(ゆかりside)
秋哉くんからの電話で緋桜の事を聞いた。
次の日の朝、夫と病院に行くと秋哉くんと佐々木さんが出迎えてくれた。
緋桜の様子を聞くと、秋哉くんは変わらずと言った後『こんなことになってしまってすいません』と謝ってきた。
そんなの、秋哉くんのせいじゃないのに。
ただ、その時の秋哉くんの目が気になった。
なんと言うか、光が消えたような……
『大丈夫?』と聞くと、秋哉くんは『大丈夫ですよ』と言って笑う。
でもその時の笑顔はとても弱々しくて、無理に笑ってるようだった。
その後、秋哉くんから今までの緋桜の事を聞いた。
緋桜が対人恐怖症だったこと、襲われて接触恐怖症を発症したこと。
そんな事、全然知らなかった。
緋桜がそんなに苦しんでいたなんて知らなかった。
そう思うと涙が出た。
しばらくして先生の話を聞いた。
その時も秋哉くんが気になった。
話は聞いてるみたいだけど、どこか虚ろな目をしていた。
佐々木さんも秋哉くんの事を気にしているみたいだった。
当然緋桜は心配だけど、秋哉くんのことも心配だった。
秋哉くんが自分自身の変化に気付いてるのか分からない。
緋桜が家に帰ることが決まってその準備に入る。
私は夫に少しだけ準備を任せて佐々木さんと話した。
「秋哉くん、大丈夫でしょうか?」
「……分かりません。昨日の今日ですから、秋哉も整理が出来てないんだと思います」
秋哉くんは私たちが緋桜と話してる間に、いつの間にか居なくなっていた。
佐々木さんがどこにいるのかは心当たりがあるから大丈夫と言っていた。
「……秋哉くんの目、何か光を失ってるように感じたんです。それがすごく心配で……」
「秋哉は落ち着いてるように見えて、今は自分でもどうしていいのか分からないんですよ。それに緋桜くんがあぁなってしまったのは自分のせいだと思ってるかもしれません」
「そんな、秋哉くんのせいじゃないのに」
そう言うと、佐々木さんは困ったように笑う。
「……そうですね。でも秋哉はそれに気付いていません。多分秋哉にも緋桜くんにも今は考える時間が必要なんだと思います」
「………あの二人がこのまま別れてしまうなんて事は」
「それは分かりません。でも多分大丈夫だと思います」
そう言って佐々木さんは笑った。
ともだちにシェアしよう!