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第389話
「緋桜疲れたでしょ?もう休んでてもいいわよ」
家に着くと母さんにそう言われた。
俺は頷くと、自分の部屋に向かった。
俺の部屋は母さんがそのままにしてくれていた。
掃除もちゃんとしてあって、布団も定期的に干しててくれてたみたいだ。
俺はベッドに横たわると、ハァとため息をついた。
この家には殆ど居なかったから、何か変な感じ。
俺の部屋なのに、そう感じない。
部屋は広くないし、高価な家具もない。
それに、秋哉が居ない。
病院から帰るとき、秋哉は居なかった。
秋哉はもう俺の顔を見るのも嫌なのかな。
佐々木さんは秋哉が俺を嫌いになるなんてあり得ないって言ってくれたけど、本当にそうなのかな。
今は秋哉の気持ちが分からない。
しばらくすると、コンコンとドアがノックされた。
返事をすると、父さんが入ってきた。
「気分はどうだ?」
「………大丈夫」
そう言いながら俺は体を起こす。
ベッドの縁に座ると、父さんが隣に来た。
「…後悔してるんじゃないか?」
「え?」
「こっちに帰ってきたこと、後悔してるんじゃないかと思って」
「……後悔、してないよ」
これは秋哉が望んだこと。
秋哉の側に居たい、そう思うのは俺の我が儘だ。
だから、ちゃんと自分で納得してここに来たのに………
なのに、なんで涙が出るんだろう。
「緋桜は秋哉くんの側にいたかったんじゃないのかい?」
父さんがそう聞いてくる。
「………秋哉の側に居たい。でも今は秋哉の側にはいられない」
「どうしてそう思うんだい?」
「……俺、どうして秋哉がダメなのか自分でも分からないんだ」
そんな状態で秋哉の側になんていられない。
「緋桜は秋哉くんに罪悪感があるのかな」
「……罪悪感?」
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