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第390話

父さんはしばらく話した後、『今日はもう休みなさい』と言って俺の頭を撫でると部屋を出ていった。 『緋桜は秋哉くんに罪悪感があるのかな』 父さんがそう言った。 罪悪感……… そうかもしれない、青木さんにキスされた時、俺はそれを阻止出来なかった。 秋哉だけだったのに、違う人にキスを許してしまって、申し訳なくて、会わせる顔がなかった。 秋哉はいつも俺の事を思っててくれたのに、そんな秋哉を拒絶するなんて…… そんなの、秋哉が離れていったって仕方ない。 そう思って俺は、ギュッと布団を握り締めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (優side) 「緋桜の様子はどう?」 リビングに戻るとゆかりがそう聞いてくる。 「かなり落ち込んでるみたいだね」 そう言うと、ゆかりは下を向いてしまう。 「………大丈夫かしら」 「今は見守るしかないと思うよ」 「……私、秋哉くんも心配なのよ」 確かに、緋桜を帰すと言った時の秋哉くんはとても辛そうだった。 秋哉くんにとっては苦渋の決断なんだろう。 緋桜の事を考えてくれてるのは分かる。 でも秋哉くん自身はどうなんだろう。 「そういえば、病院で佐々木さんと何か話してたね」 「佐々木さんも秋哉くんの事を心配してたの。秋哉くんは緋桜があぁなってしまったのは自分のせいだって思ってるみたい」 『秋哉くんのせいじゃないのに』とゆかりは悲しそうな顔をする。 「そうだね、でもそれは多分誰が言っても秋哉くんには伝わらないかもね」 「……どうして?」 「"秋哉くんのせいじゃない"って誰が言っても、秋哉くん自身が気付かなきゃ意味がない」 「………どうやったら気付いてくれるんだろう」 「それは分からないね。何か切っ掛けがあれば良いんどけど」

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