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第391話

(秋哉side) 緋桜が実家に帰ってから一週間が経った。 俺はいまだに緋桜に会いに行けないでいた。 佐々木からは何度も緋桜に会いに行けと催促されてる。 俺も緋桜に会いたい。 でも何故か動けなかった。 緋桜が居なくなってから、何もする気になれない。 あれから学校にも行ってなかった。 先輩たちからは毎日のように電話やメールが来るけど返してない。 先輩たちには多分、高橋さんから連絡がいってる。 高橋さんと青木には、あの後佐々木が連絡をして詳しい事を話した。 俺はあれ以来、二人には会っていない。 ただ緋桜が居ないだけ。 今までだって一緒に居ないことはあった。 状況は一緒なのに、今までとは全てが違う。 緋桜が居ないと思うだけで、自分の部屋が違う部屋みたいだ。 俺の部屋ってこんなに広かったっけ………… 何もかもが無機質に見える。 緋桜が居たときは、緋桜と居られるこの部屋が温かく思えたのに。 今はそう思えない。 そう思って、俺はソファに寝転がって天井を見上げた。 どれくらい経ったのか、ボーっとしていると部屋の外が騒がしい事に気付く。 バタバタと足音が聞こえてくる。 その音がだんだん近付いてきて部屋の前で止まったと思ったら、ドアが勢い良く開けられた。 部屋のドアを勢い良く開けて入ってきたのは、佐倉先輩だった。 「お前なにやってんだよ!?」 入ってくるなりそう迫られて、俺は訳が分からなくなる。 「メールしても電話しても返事がないし、来てみれば塞ぎ込んでるし!」 そう言われて俺が反論出来ないでいると、先輩は大きくため息をついた。 「叔父さんから聞いた、お前中村のとこにも行ってないらしいな」 ……あぁ…そのことか…… 「……行けませんよ。俺にはその資格が無いですから」 そう言うと先輩の顔が更に険しくなった。 「なんだよ、資格って」 「高橋さんから聞いたなら、状況は分かってる筈です。緋桜は今、俺も駄目なんですよ。今俺が行ったら、緋桜の負担になる」 「……それは中村がそう言ったのか?」 「え?」 「中村の口から直接聞いたのかって言ったの」 ………緋桜の口から直接? 「今のお前は、中村の為って言いながら自分が傷付くのを怖がってるだけだ。中村の所に行って、また拒否られる事を恐れてる」 「………そんな事」 「違うって言うのか?お前は今、中村の意見は聞かずに自分の意見だけを中村に押し付けてるんじゃないのか?」 そんな事はない。 そう反論したいのに、言葉が出てこない。 あの日、緋桜は何て言った? 『………いやだ、帰りたくない』 緋桜は確かにそう言った。 俺が間違ってた? 緋桜を実家に帰すのが、緋桜も落ち着けると思ってた。 ゆかりさんたちが一緒なら大丈夫と思ってた。 でもそれは俺がそう思い込んでいただけなのか? 俺はそう思って考えてみるけど、何が正解なのか分からない。 俺は正解を求めて先輩を見た。 そんな俺を見て先輩はため息をついた。 「いいか、中村の中心はいつだってお前だ。多少意見するようになってきたとは言っても、お前の意に反することはしないだろ?」 そう言われて、俺は頷いた。 緋桜は事後承諾が多いけど、最終的には俺の意見を聞いてくれる。 「中村はあの性格だからな。嫌われたくないと思って秋哉に必死に答えようとする」 俺は緋桜の為にと思って、色々してきた。 でもそれは俺が緋桜に押し付けてたこと……? 俺は緋桜に我慢させてた? そんな事を考えていると、先輩がクスッと笑う。 「お前たちはもっと話し合う必要があるな。秋哉はもっと中村の意見を聞いてやれ。今も中村は待ってると思うぞ?」

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