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第393話
(秋哉side)
「佐々木!緋桜の実家に連れてってくれ」
佐々木の居るキッチンに入るなりそう言った俺に佐々木は驚いた顔を向ける。
「どうしたんですか、急に」
「緋桜に会いに行く」
そう言うと、佐々木は笑って『分かりました』とだけ言って出掛ける準備をし始めた。
俺は佐々木の支度が終わるのを待っていた。
そこに先輩が居ることに気付いた。
「ありがとうございました」
そう言うと先輩は笑う。
「吹っ切れたみたいだな」
「……いや、不安はまだあります」
「それは中村も一緒だろ」
「…そうですね」
先輩とそんな話をしていると、佐々木が準備が終わったと伝えに来た。
「それじゃ、行きます」
「中村によろしくな、それと翠と朱春も心配してたから後で連絡してやれ」
「……はい」
そう言って、俺は先輩と別れた。
緋桜が落ち着けるなら実家の方がいいと思ってた。
それが緋桜の為だと思ってた。
でもそれは間違えだった。
俺が緋桜に拒絶されるのが嫌で、緋桜から距離をとった。
全部緋桜の為だと言って、自分が傷付かない為だった。
緋桜の気持ちなんてこれっぽっちも考えていなかった。
俺は緋桜を突き放してしまったことを後悔した。
なんで気付かなかったんだろう。
緋桜は俺を求めてくれてたのに。
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