398 / 452

第394話

(秋哉side) 緋桜の実家についてインターフォンを押すとゆかりさんが出てきた。 「秋哉くん!?」 「すいません、突然押し掛けてしまって」 そう言うと、ゆかりさんは首を振る。 「大丈夫よ」 そう言うゆかりさんはどこかホッとしたような表情を見せた。 ゆかりさんにもかなり心配掛けてしまってたみたいだ。 「緋桜と話せますか?」 「緋桜なら部屋に居るわ」 そう言ってゆかりさんはニコッと笑う。 「……緋桜の様子はどうですか?」 そう聞くと、さっきまで笑ってたゆかりさんの表情が曇る。 「元気……とは言えないかもしれないわね。この一週間部屋からは殆ど出ないし、ご飯もあまり食べないの」 「……そうですか」 「でも、秋哉くんが来てくれたからもう安心ね」 そう言ってゆかりさんの曇ってた表情が一変して明るくなる。 俺はそんなゆかりさんを見て胸が苦しくなった。 「………俺は緋桜から逃げたんです。緋桜に拒絶されるのが嫌で、自分が傷付くのが怖くて。緋桜の為だと言いながら、俺は自分の事しか考えてなかったんです」 そんな俺が本当に緋桜に会っても良いんだろうかと思う。 それでも今は、緋桜に会いたくて仕方ない。 「それは仕方のない事だと思うわ。誰だって拒絶されたくないし、傷付きたくない。それが大切な人なら尚更。でも秋哉くんはちゃんと戻ってきたでしょ?この一週間、一杯悩んだ筈よ。一杯悩んで、迷って……それでちゃんと答えは出たんでしょ?」 「……はい、緋桜を突き放しておいて勝手だとは思います。でも俺はこれからも緋桜と一緒に居たい」 そう言うと、ゆかりさんは笑った。 「親として、あの子を支えてあげられないのは情けない事だと思う。でも、今あの子が求めてるのは私たちじゃなくて貴方なの」 ゆかりさんは俺を真っ直ぐ見る。 「緋桜をよろしくお願いします」 そう言ってゆかりさんは頭を下げた。

ともだちにシェアしよう!