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第395話
(秋哉side)
緋桜の部屋の前まで来ると、俺はドアの前で深呼吸をした。
……なんか、今までで一番緊張してるかもしれない。
いくら深呼吸しても、その緊張は消えなかった。
大切な人に嫌われるのは怖い、拒絶されたくない。
緋桜はずっとこんな気持ちだったのかな。
……今になって緋桜の恐怖が分かるなんてな。
そんな事を考えると、思わず苦笑が漏れた。
俺はもう一度深く深呼吸をする。
息を吐ききると、俺は意を決してドアをノックした。
ノックしてしばらく、中から緋桜の声が聞こえてきた。
「……緋桜」
俺が呼び掛けると、中からガタガタと音が聞こえてくる。
ドアノブが動いて、緋桜がドアを開けようとしてるのが分かった。
「待って、開けないで」
そう言って俺はドアノブを掴んで回らないようにした。
そのすぐ後ドアノブの回す力が消えて、緋桜が離したんだと分かる。
「ごめん……このまま、話を聞いてほしい」
情けないと思う。
今の俺には、このドアさえ開ける勇気がない。
それでも緋桜と話がしたい。
そう思った。
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