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第396話

部屋でボーッとしていると、ドアがノックされた。 「……はい」 母さんかなと思って返事をしても、入ってくる様子がなくてどうしたんだろうと思った。 『……緋桜』 しばらく様子を見ていると、そう俺を呼ぶ声が聞こえてきた。 秋哉!? 俺は慌ててドアを開けようとした。 ドアを開けようとするとドアノブが回らなくて、秋哉が『開けないで』と言った。 ………秋哉は俺の顔も見たくないんだ。 そう思って、俺はドアノブから手を離した。 『ごめん……このまま話を聞いてほしい』 秋哉のその言葉に心臓がドクンと脈打った。 その後、秋哉は少し黙ってしまう。 俺はその沈黙が怖かった。 秋哉は何を話に来たの? 聞きたいのに、聞くのが怖い。 さっきから嫌な考えしか浮かばない。 『……俺は、緋桜に拒絶されて……すごいショックだった』 沈黙の後、秋哉がポツポツと話始めてまた胸が苦しくなる。 『何で俺じゃ駄目なんだろうって思った。俺が守れなかったから……あの時俺が着いてっていれば、緋桜とあいつを二人にしなければってずっと後悔してた』 違う、こうなったのは俺のせい。 俺が弱いから…… 『緋桜を実家に帰したのも、緋桜の為とか言いながら、俺の為だったんだ』 秋哉はそこまで言うと黙ってしまう。 少し待ってると、秋哉はまた話始めた。 『傷付くのが怖かったんだ。緋桜に拒否られて、怖がられて……それを目の当たりにするのか怖くて堪らなかった。 すごい情けないと思う。今になって緋桜の感じてた恐怖が分かった。今まで理解してるつもりで、何も分かってなかったんだ』 違う、分かってほしいなんて思ってない。 俺はただ…… 『もしかしたら、もう遅いのかもしれない。でも俺は………』 そこまで言う秋哉を、俺はドアを叩いて遮った。 秋哉が何を言おうとしたのかは分からない。 ただ聞いてるのが辛くて…… 自分を責めてる秋哉が許せなかった。

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