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第399話

(秋哉side) 『……秋哉と一緒に居たい、秋哉と離れたくない』 かろうじてそう聞こえてくる。 それと同時に、緋桜の嗚咽が聞こえてきた。 俺はこんなにも緋桜に寂しい思いをさせてたんだ 。 『……秋哉の傍に……居たい』 そう聞こえてきて、俺は堪らなくなってドアを開けた。 ドアを開けると、すぐそこに緋桜がしゃがみ込んでた。 見ると、緋桜と目が合う。 緋桜はボロボロと涙を流しながら、俺に向けて手を伸ばしてきた。 俺は伸ばされた緋桜の手を取ることに少し躊躇した。 この手をとっても良いのか悩む。 「……秋哉」 緋桜が俺の名前を呼んで更に手を伸ばしてくる。 必死に手を伸ばして俺を求める緋桜を、そのまま放っておけるわけがなかった。 俺は、そんな緋桜を抱き締めた。 緋桜を抱き締めると、微かに震えてるのが伝わってくる。 「っ!ごめん」 そう言って俺は慌てて離れようとした。 「やだっ」 離れようとした俺を緋桜が止める。 「……緋桜」 緋桜は俺の服をギュッと握って離そうとはしない。 でもその手はまだ微かに震えている。 「…緋桜、俺が怖いんじゃないの?」 そう言って緋桜の手をそっと触れると、緋桜の体がピクンと反応する。 「……大丈夫、だから」 緋桜の手を離そうとはすると、緋桜はそう言って俺の服を握る手に力を入れる。 「…大丈夫だから、お願い……離さないで…」 そう言って緋桜は涙を流す。 俺はそんな緋桜を、もう一度抱き締めた。 「震えてる」 そう言うと、緋桜は俺の背中に手を回す。 「……大丈夫」 緋桜の事を考えたら、本当は離した方がいいのかもしれない。 そう思っていても、久しぶりに感じる緋桜の体温に、俺は離れることが出来なかった。 「……本当にいいの?ここに居た方が緋桜も怖い思いしなくてすむ」 「……確かに怖いって思う。でも、それよりも秋哉が傍に居ない方が辛い」 そう言って緋桜がすり寄ってくる。 「ここに帰ってきてから、ずっと寂しかった。母さんも父さんも居て、俺の事気にかけてくれてるのに、ずっと何か足りなかった。ずっと心に穴が開いたみたいだった」 俺はそう言う緋桜を更に抱き締めた。 「………俺も一緒だ。いつもと同じ部屋なのに、緋桜が居ないだけで違う部屋みたいだった。この一週間、ずっと緋桜の気配を探してるんだ。それを見つける度に緋桜が居ない事を思い知らされた。自分で送り出しといて、こんな事思うのは勝手かもしれないけど」 そう言うと、緋桜は小さく首を振った。 「………秋哉の傍に居たい」 「うん、俺も緋桜に傍に居てほしい」 「……秋哉と一緒に帰りたい」 「うん、一緒に帰ろう」

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