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第400話
秋哉に『震えてる』と指摘された。
秋哉に抱き締められて、体は拒否してる。
でもそれ以上に心が満たされたような気がした。
胸にぽっかり空いた穴が埋まっていく。
そんな気がした。
『一緒に居たい』『一緒に帰りたい』そんな思いが募っていく。
抑えきれなくて、思いが口から出てしまう。
こんな事言ったら秋哉を困らせてしまうかもしれない、そう思ってるのに止める事が出来なかった。
「うん、一緒に帰ろう」
そう秋哉から返ってきて、一瞬耳を疑った。
「………いいの?」
秋哉を見ると、優しく微笑んでる。
「その為に来たから……もう俺が緋桜と離れてるのが耐えられない、一緒に帰ろう」
そう言って秋哉はまた俺を抱き締めてきた。
俺はまたボロボロと泣いてしまった。
俺たちはしばらく抱き合っていた。
落ち着いてくると秋哉がスッと離れる。
「緋桜を連れて帰る事、ゆかりさんたちに伝えなきゃな」
そう言って秋哉が完全に離れてしまった。
今まで離れてた反動なのかな。
ほんの少し離れただけで寂しいと思ってしまう。
そう思っていると、ギュッと手を握られて思わず体が揺れた。
見ると秋哉が少し困ったように笑っていた。
「ごめん、緋桜は嫌かもしれないけど、やっぱり緋桜に触れられないのは耐えられない。だから、嫌だったら振り払って」
俺はそう言う秋哉に首を振った。
「……嫌じゃ、ない」
そう言って俺は秋哉の手を握り返した。
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