415 / 452
第411話
秋哉が料理を作ると言い出した。
俺は秋哉が料理してるところを一回も見たことがない。
俺が作ってる時に手伝ってくれたことはあるけど……
前に俺がオムライスを作った時に違う食材を持ってきてたし、ちょっと不安。
俺は本当に大丈夫かなって思って、後ろから眺めていた。
秋哉が取り出したのは、ご飯と卵。
他にハムとかネギもあった。
俺はチャーハンでも作るのかなって思ってたら、秋哉は冷蔵庫から何故か魚の切り身を取り出した。
………あれ何に使うんだろ?
て言うか、秋哉は何を作ろうとしてるんだろう。
「……秋哉、何作るの?」
そう聞くと『チャーハン』と返ってきた。
やっぱりチャーハンなんだ。
「……秋哉、チャーハンに魚の切り身は使わないよ?」
俺がそう言うと、秋哉はきょとんとする。
「あれ、入ってなかったっけ?」
まぁ、入れても美味しいと思うけど……
「あまり入れないかな」
俺は秋哉の隣に行くと、ご飯と卵とハムとネギを避けた。
「チャーハンなら、これで作れるよ」
俺は他の食材は戻すように言った。
後は作る気満々の秋哉に任せることにして、俺は椅子に座った。
俺だって、人に言えるほど料理が出来る訳じゃない。訳じゃないけど………
秋哉が包丁を使う時や火を使う時とか危なっかしくて、俺はその様子をハラハラしながら見ていた。
秋哉を見ていると、ふと後ろに気配を感じた。見ると佐々木さんが立ってて、俺が挨拶しようとしたら、佐々木さんが自分の口に人差し指を当てた。
佐々木さんがそっと近付いてくる。
『緋桜くん、おはよう』
佐々木さんは、そう小声で挨拶してきた。
『おはようございます』
そんな佐々木さんに俺も小声で返す。
『秋哉が料理なんて珍しい』
そう言ってクスクスと笑いながら、佐々木さんは俺の横に座った。
俺はチラッと秋哉を見る。
秋哉はチャーハン作りに集中してて、佐々木さんには気付いてないみたいだった。
ともだちにシェアしよう!