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第414話

俺は箱から必要な器具を取り出すと、一通り洗う。 その後、コーヒーミルで高橋さんから貰った豆を挽いた。 その瞬間、コーヒーの良い香りが立ち込める。 まだそんなに時間は経ってないけど、俺はなぜかその香りがすごく懐かしく感じた。 豆を挽き終えると、お湯を沸かして器具の準備をした。 この一週間くらい練習してなかったから、上手く淹れられるかな。 それがちょっと不安だった。 お湯が沸くと、俺はフィルターに挽いた豆を入れる。 俺は高橋さんに言われた事を思い出しながら、ゆっくりとお湯を注いだ。 淹れ終えると、秋哉と佐々木さんに出した。 二人が俺の淹れたコーヒーを飲む。 どうしよう、すごい緊張する。 そう思って、俺はギュッと手を握った。 「うん、美味しいよ」 そう言って秋哉がニコッと笑った。 「……本当?」 そう聞くと、秋哉は頷いた。 佐々木さんを見ると、佐々木さんも笑って頷いていた。 俺はホッとしたら、体の力が抜けて座り込んでしまった。 「緋桜!?」 「緋桜くん!?」 座り込んでしまった俺に驚いた秋哉と佐々木さんが駆け寄ってくる。 「緋桜、大丈夫!?」 そう言って秋哉が座り込んだ俺に手を差し伸べる。 俺はその手にビクついてしまった。 それに気付いた秋哉が手を引く。 俺は手を引こうとする秋哉の手を握った。 「……ごめん、大丈夫だから」 そう言うと、秋哉が小さくため息をつく。 そう思ったら、体がフワッと持ち上げられて椅子に座らされた。 「そんなに無理しなくていい」 そう言って秋哉が俺の頭を撫でる。 ……無理、してるつもりは無いんだけど。 やっぱり急にこられると体が強張ってしまう。身構えてれば大丈夫なんだけど。 ………って、身構えなきゃ秋哉に触れられないなんて、おかしいよね。 そう思って、俺は小さくため息をついた。 俺は気持ちを落ち着かせる為に目の前にあるコーヒーを一口飲んだ。 やっぱり高橋さんが淹れるコーヒーとはどこか味が違う。 どうしてなんだろう? そう思って原因を考えていると、秋哉と佐々木さんがクスクス笑ってた。 俺はどうしたのかと思って、首を傾げた。 「やっぱり緋桜はコーヒー淹れるの好きなんだね」 そう言って秋哉はクスクス笑う。 「今もどうしたら高橋さんの味になるだろうって考えてたでしょ?」 そう言われて、俺は頷いた。 最初はちょっとした興味で始めたことだったけど、やってみたらどんどんハマっていく自分が居た。 こんなことになっちゃって、もう出来ないって思ったけど、さっきコーヒーを淹れてみて、やっぱり楽しいって思った。 そう思っていると、秋哉がクスッと笑う。 「高橋さんに連絡してみようか」

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