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第415話

(秋哉side) 緋桜にコーヒーを淹れてと頼んだら、最初は渋々といった感じだったけど、準備をしてる最中とか、コーヒー豆を挽いてるときとかすごい楽しそうだった。 緋桜は少し微笑みながらコーヒーを淹れてる。 多分緋桜は今、自分がどんな顔でコーヒーを淹れてるのか分かってないんだろうな。 そう思いながら、俺はコーヒーを淹れる緋桜を眺めていた。 淹れ終えてコーヒーを出す緋桜は、緊張してるように見えた。 一口飲むと、いつもの緋桜のコーヒーの味がフワッと広がる。俺はホッと息を吐いた。 『美味しい』と言うと、緋桜はその場に座り込んでしまった。 俺は座り込んでしまった緋桜に駆け寄って、思わず手を出してしまった。 その瞬間、緋桜の体がビクッと跳ねる。 しまったと思った。俺が手を引くと、緋桜は俺の手を掴んできた。 緋桜は『大丈夫』と言う。でもその手は微かに震えていた。 そんなに無理しなくていいのに。 そう思って俺は緋桜を椅子に座らせると、緋桜の頭を撫でた。 その後緋桜は自分で淹れたコーヒーを飲むと、少し考え込んだ。 多分、高橋さんのコーヒーと比べてるんだろうな。 緋桜はコーヒーを淹れる事にハマっていた。 いつもコーヒーを淹れる時は、すごく楽しそうに淹れる。 緋桜の事だからこんなことになって、もう続けられないと思ってるんだろう。 でも本心は続けたいと思ってる。 「高橋さんに連絡してみようか」 そう言うと、緋桜はきょとんとして固まってしまう。 「緋桜は続けたいと思ってるでしょ?高橋さんに連絡してみよ?」 「……でも、俺……今こんなだし……」 そう言って緋桜は小さく首を振る。 「高橋さんは今回の事情は知ってるし、緋桜の事もざっくりだけど話してある」 『大丈夫だよ』と言うと、緋桜は俯いてしまう。 「焦ることはないからゆっくり考えてみると良いよ」 そう言うと、緋桜は小さく頷いた。

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