422 / 452

第418話

俺は高橋さんが作ってた手順を思い出す。 まずはお湯を沸かす。その間にオレンジを皮がついたまま6等分にカットした。それをティーポットに入れる。 もう1つ用意したポットに紅茶葉を入れる。 そこで俺は一瞬手を止めた。 ……確か、フルーツティーを作るときは濃いめに淹れた方が良いって、高橋さんが言ってた。 それを思い出した俺は、普通ならティースプーン2杯のところを3杯入れた。 お湯が沸いて、そのお湯を茶葉を入れたポットに注いだ。 その瞬間、紅茶の良い香りが立ち込める。 後は少し蒸らして、オレンジの入ったポットに入れれば完成。 上手く出来てれば良いけど、取り敢えずここまで出来たことに俺は息を吐いた。 そんな事をしていると、ピンポーンとインターフォンが鳴った。 その音に、秋哉が『来たみたいだな』と言って、佐々木さんと一緒に出迎えに行った。 俺はその前に蒸らしていた紅茶をオレンジの入ったポットに注ぎ入れた。 先輩たちは俺のために来てくれたんがから、本当は俺が真っ先に出迎えなきゃいけないんだけど、今ポットに紅茶を注いどかないとオレンジが紅茶に馴染まない。 俺は紅茶をポットに注ぎ終えると、急いで玄関まで向かった。 陰から玄関の様子を伺う。 秋哉が先輩たちと何か話してるみたいだ。 その様子を見ていると、ふと宮藤先輩と目が合った。 「中村くん!」 目が合った瞬間、宮藤先輩が駆け寄ってきた。 宮藤先輩が俺に向かって手を伸ばして抱きついて来ようとした。 これは先輩が会う度にしてくる事。 いつもの事なのに、俺はそれが怖くて後退ってしまった。 その瞬間、宮藤先輩が悲しそうに笑う。 「そうだったわね。ごめんなさい」 そう言って先輩が俺から少し距離を取った。 「……すいません」 俺が謝ると、皆黙ってしまった。 「取り敢えず、皆中に入ってください」 そう言って秋哉がパンと手を鳴らす。 先輩たちは秋哉の言葉にしたがって、皆して秋哉の部屋に向かった。 「大丈夫だよ」 俺の前を通り過ぎる時、秋哉がそう言って俺の頭に手を置いた。

ともだちにシェアしよう!