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第420話
(佐倉side)
久しぶりに会った中村は、いつもと変わらないように見えた。
でもやっぱり秋哉との距離が離れていた。
秋哉も出来るだけ触れないように、触れるときは中村に見えるようにゆっくりと触れていた。
中村も秋哉が触れようとすると一瞬体が強張ってるように見えた。
それでも秋哉に触れられると、嬉しそうに微笑んでる。
中村自身も、秋哉には自分から近寄っていってる感じだ。
まぁ、少し前の事を考えると、これはこれで良かったんだと思う。
俺たちは、秋哉の案内で秋哉の部屋に向かった。
その時、中村は着いてこなかった。
「秋哉、中村は?」
そう聞くと、秋哉はニッコリと微笑む。
「今、皆の飲み物を淹れてるんですよ」
そう聞いて、俺は察した。
「続けてるんだな」
「最初はもう出来ないって思ってたみたいだけど、やってみるとやっぱり好きみたいです。さっきも楽しそうに淹れてましたよ」
「……そうか」
そう言って、俺はホッと息を吐いた。
「そういえば、叔父さんとも会う約束をしたみたいだな」
そう言うと、秋哉は頷く。
「今度の日曜日に」
「叔父さんもすごく心配していた。あれから何度も連絡あったしな」
「高橋さんにも心配掛けてしまいましたね。俺も連絡する余裕が無くて……」
そう言って、秋哉は申し訳なさそうに笑う。
まぁ、あの状態なら仕方ないと思う。
あの時は中村もだけど、秋哉もかなり傷心していたからな。
そんな会話をしていると、微かにノック音がした。
その音に秋哉が急かさず反応する。
秋哉がドアを開けると、ティーセットとか色々持った中村が立っていた。
二人の様子を見ていると、秋哉が一言二言話すと中村の持ってたトレイを受け取る。
そのまま一緒に部屋に入ってきた。
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