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第421話

先輩たちが秋哉の部屋に向かったことを確認すると、俺はもう一度キッチンに戻った。 紅茶を入れて置いておいたポットの蓋を開けて香りを確認する。 その瞬間、フワッとオレンジと紅茶の良い香りが漂った。 良い感じに果汁が馴染んだかな。 そう思って、俺はそのポットを端に避ける。 次にドリッパーとサーバーを用意した。 ドリッパーにフィルターをセットして挽いておいたコーヒー豆をフィルターに入れた。 ドリッパーをサーバーの上にセットすると沸かしておいたお湯でゆっくりと注いでコーヒーを作った。 俺は出来上がったコーヒーと紅茶、宮藤先輩がカフェオレって言った時の為のミルクと佐々木さんが用意してくれていたお茶菓子のパウンドケーキをトレイに乗せて秋哉の部屋に向かった。 秋哉の部屋の前まで来ると、両手が塞がってノック出来ないことに気付く。 どうしようと思って悩んだ結果、行儀が悪いけど足でドアを軽く蹴った。 それに気付いて、すぐに秋哉が顔を出した。 「呼んでくれれば良かったのに」 俺の手に持ってるトレイの上を見た秋哉が、そう言って苦笑を漏らす。 秋哉は俺の手からトレイを取ると、先輩たちのところに向かう。俺もそれに続いた。 秋哉が俺が持ってきたティーセットをテーブルの上に並べていく。 「これ中村くんが淹れてくれたの!?」 「えっと……宮藤先輩はカフェオレの方が良いかもと思って、ミルクも……」 そう言ってミルクの入ったカップを見せると、先輩の顔が一気に笑顔になった。 「ありがとう、すごく嬉しい」 そう言って笑う先輩に、俺も釣られ口角を上げた。 「……あの、日向先輩にはこれ……」 俺は次に日向先輩に向くと、オレンジティーをカップに注いで、それを先輩の前に置いた。 「先輩はコーヒーが飲めないから、オレンジティーなんですけど……」 俺がそう言うと、日向先輩はオレンジティーを一口飲んだ。 「…うん、すごく美味しいですよ」 そう言って先輩は笑う。 俺はホッと息を吐いた。 「良かったね」 秋哉がそう言ってきて、俺は頷いた。 その後はしばらく、皆でパウンドケーキを食べながら他愛ない話で盛り上がった。

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