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第423話
次の日曜日、俺と秋哉は約束通り高橋さんに会うために家を出た。
向かってる先はノワール。
他の店だと人が居ることと、ノワールで話した方が話しやすいんじゃないかという高橋さんの配慮だ。
高橋さんには今回の事で沢山迷惑掛けてるのに、そんなとこまで気を使わせてしまって申し訳ない。
佐々木さんが用意してくれた車に乗り込む。秋哉も後部座席に座るけど、やっぱりまだ端と端。
一時の事を考えると、手の届く範囲に秋哉が居ることは嬉しいけど、悲しくもあった。
「じゃあ、行きますよ」
佐々木さんがそう言うと、車が走り出した。
会う相手は高橋さんだけど、やっぱり緊張するな。
そう思って、俺は小さく深呼吸をする。
「緋桜、大丈夫?」
俺が何回か深呼吸を繰り返していると、秋哉がそう言って覗き込んできた。
「あ、だ、大丈夫」
慌ててそう言うと、秋哉がクスッと笑った。
「緊張してるでしょ?」
そう聞かれて、俺は頷いた。
「……これだけ迷惑掛けてるのに、これから高橋さんに頼むことは、俺の我が儘だから」
秋哉や先輩たちにコーヒーを淹れて、もっとやりたいって思った。
もっと美味しいコーヒーを淹れたい。でもそれは俺一人じゃ無理だから……
「高橋さんなら大丈夫なんじゃないかな。むしろ、緋桜がやりたいって言ったら喜ぶと思うよ」
そう言って秋哉は笑った。
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