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第425話
ノワールに着くと、中々決心がつかなくてドアが開けられなかった。
秋哉が『開けようか』と言ってきたけど、ここで秋哉に開けてもらうのはダメだと思った。
俺はもう一度深呼吸すると、意を決してドアを開けた。
ドアを開けると、カランカランとドアベルが鳴る。店の中に入ると、まだ一週間くらいしか経ってないのに、なんか懐かしく感じた。
ドアベルの音で高橋さんがスタッフルームから出てくる。
俺は思わず後退ってしまった。
挨拶を交わす秋哉と高橋さんを少し後ろから見ていると、高橋さんと目が合った。
目が合った瞬間、高橋さんがニコッと笑う。
「緋桜くん、元気そうで良かった」
そう言って笑う高橋さんに、胸がギュッてなった。
「…すいません、心配掛けてしまって。連絡も出来なくて」
「気にしなくて良いよ。それどころじゃなかったのは分かってるから」
「……すいません」
もう一度謝る俺に、高橋さんがクスッと笑う。
「取り敢えず座って話そうか」
そう言って俺と秋哉はスタッフルームに案内された。
俺と秋哉が中央に置いてある椅子に座ると、高橋さんがスタッフルームに設置されているコーヒーサーバーからコーヒーを淹れて出してくれた。
「作り置きで申し訳ないけど」
そう言って高橋さんがコーヒーの入ったカップを差し出す。
「……ありがとうございます」
俺は頭を軽く下げながら、カップを受け取った。
高橋さんは秋哉にもカップを渡す。
秋哉もお礼を言いながらそれを受け取った。
俺は気持ちも落ち着かせる為にコーヒーを一口飲んだ。
その瞬間、作り置きとは思えないくらい、コーヒーの芳醇な香りが口一杯に広がった。
「……美味しい」
俺が目指してる高橋さんの味だ。
そう思ったら、自然と笑みが溢れた。
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