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第426話

高橋さんに『緋桜くんや辞めちゃうのかな?』と言われて、俺と秋哉は顔を見合わせた。 「……あの……辞めるも何も、俺クビ……」 そう言うと、高橋さんはきょとんとしてしまう。 「俺は緋桜くんをクビにするつもりはないよ。 ……緋桜くんが辞めたいって言うなら別だけどね」 そう言って高橋さんは少し寂しそうに笑う。 俺は元々まともに接客が出来なかったのに、今は多分店に出ることすら出来ないと思う。 だから当然クビになると思ってた。 「……でも俺……迷惑……」 「大丈夫だよ。店には好きな時に来てくれれば良いから」 そう言って高橋さんは笑う。 本当に良いのかと思って、俺は秋哉にも視線を向ける。 秋哉と目が合うと、秋哉は笑って頷いた。 高橋さんも何も言わずに俺の返答を待っててくれてる。 本当に良いのかという思いは消えない。 本当に望んで良いのか分からない。 でも俺は……… 「………続けたいです」 そう言って、俺は高橋さんを見た。 「すぐには無理かもしれないけど、少しずつだったら……」 「うん、分かった。焦らなくて大丈夫だよ、ゆっくりで良いから」 そう言って高橋さんはニコッと笑った。 「あ、あの……」 突然声を出した俺に高橋さんが首を傾げる。 「……えっと………また、コーヒーの淹れ方…教えてくれますか?」 バイトとしてまともに店にも出れないのに、こんなこと頼むなんてやっぱり図々しいかな。 そう思って、俺は高橋さんが見れなくて下を向いてしまう。 「勿論だよ。喜んで教えるよ」 そう言う高橋さんを見ると、高橋さんは嬉しそうに笑っている。 俺が秋哉を見ると、 『ね、喜ぶって言ったでしょ』 そう小声で言って笑う。 俺は、そう言う秋哉に頷いた。 その後高橋さんと話し合って、店が終わった後教えてもらえる事になった。

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