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第438話 秋哉

緋桜が大丈夫だと言いはるから見守っていたけど、緋桜は教室に入る前から顔が強張っていた。 先輩たちも緋桜が心配だったみたいで、緋桜の教室まで着いてきていた。 「………あれは駄目だろ」 佐倉先輩がそう呟く。 「………ですよね」 緋桜が意を決して教室に入ったまでは良かったけど、席に着くと周りの生徒たちの目を気にして俯いてしまう。 なんとか落ち着こうとはしてるみたいだけど、逆にそのせいで余計に焦ってしまってるみたいだ。 どんどん顔が青ざめて、呼吸も荒くなってきている。 俺は限界だと思って、緋桜を教室から連れ出した。 緋桜を引っ張ってきたのは生徒会室。 最近では何だかんだで一番落ち着ける場所になってる。 生徒会室に入るなり、緋桜が座り込んでしまった。 どうやら気が抜けたみたいだ。 その様子を見て、先輩たちがわたわたと緋桜が座れるようにソファを片付けていた。 先輩たちを動かせるなんて緋桜くらいだろうな。 そう思ったら、思わず笑みが溢れた。 俺は座り込んでしまった緋桜を立たせてソファに座らせる。 そんな緋桜に日向先輩が飲み物を渡す。 緋桜はそれを申し訳なさそうに受け取っていた。 「緋桜、無理はしないでって言ったよね」 緋桜の前にしゃがんでそう言う。 「……ごめん」 『大丈夫だと思って……』と言う緋桜に、俺はため息をついた。 本当、緋桜の『大丈夫』は当てにならないな。

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