438 / 452
第438話 秋哉
緋桜が大丈夫だと言いはるから見守っていたけど、緋桜は教室に入る前から顔が強張っていた。
先輩たちも緋桜が心配だったみたいで、緋桜の教室まで着いてきていた。
「………あれは駄目だろ」
佐倉先輩がそう呟く。
「………ですよね」
緋桜が意を決して教室に入ったまでは良かったけど、席に着くと周りの生徒たちの目を気にして俯いてしまう。
なんとか落ち着こうとはしてるみたいだけど、逆にそのせいで余計に焦ってしまってるみたいだ。
どんどん顔が青ざめて、呼吸も荒くなってきている。
俺は限界だと思って、緋桜を教室から連れ出した。
緋桜を引っ張ってきたのは生徒会室。
最近では何だかんだで一番落ち着ける場所になってる。
生徒会室に入るなり、緋桜が座り込んでしまった。
どうやら気が抜けたみたいだ。
その様子を見て、先輩たちがわたわたと緋桜が座れるようにソファを片付けていた。
先輩たちを動かせるなんて緋桜くらいだろうな。
そう思ったら、思わず笑みが溢れた。
俺は座り込んでしまった緋桜を立たせてソファに座らせる。
そんな緋桜に日向先輩が飲み物を渡す。
緋桜はそれを申し訳なさそうに受け取っていた。
「緋桜、無理はしないでって言ったよね」
緋桜の前にしゃがんでそう言う。
「……ごめん」
『大丈夫だと思って……』と言う緋桜に、俺はため息をついた。
本当、緋桜の『大丈夫』は当てにならないな。
ともだちにシェアしよう!