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第439話

「しかし、どうするか……」 そう佐倉先輩が呟く。 「中村が教室に行けないとなると、またここに居て貰うことになるけど」 『一人にしておくのもなぁ』と言って、先輩は考え込んでしまう。 「あ、あの…俺、一人でも大丈夫ですよ」 そう言うと、皆してじっと見てきた。 俺はその視線に、思わず引いてしまった。 「俺がここに居ますよ」 そんな俺を横目に秋哉がそう言う。 「まぁ、そうなるか……」 と先輩たちも納得してしまう。 「…一人でも大丈夫だって……」 そう言って俺は秋哉の袖を掴む。 そうすると、秋哉がまたじっと見てきた。 「さっきも大丈夫って言って駄目だったでしょ?緋桜の『大丈夫』は当てにならないよ」 そう言われて、俺は言葉に詰まってしまう。 さっきも大丈夫って言って、結局ダメだった。 そのせいで今の状態になってる。 でもここなら本当に大丈夫だと思う。 そう思うのに、秋哉に返す言葉が見つからない。 そう思って、俺は秋哉の袖を掴んだまま下を向いてしまった。 「でも中村の言う通り、ここなら大丈夫か……」 と佐倉先輩が言う。 そんな先輩に、皆の視線が集中した。 「ほら、今だって中村は平気そうだし、ここなら他の生徒も来ることはないし、それに秋哉は今日は教室に行くって佐々木さんと約束してるんだろ?」 佐倉先輩にそう言われて、秋哉が気まずそうにする。 「……それはそうですけど」 「中村も、今は平気だろ?」 そう聞かれて、俺は頷いた。 「ほらな」 そう言って先輩は笑う。 そんな先輩の言葉に秋哉は考え込んでしまった。 「秋哉くん、心配なのは分かるけど、佐々木さんと約束したなら秋哉くんもちゃんと授業受けなきゃ駄目よ?」 と宮藤先輩が言う。 「そうですよ。また休み時間になったら様子を見に来れば良いんですから」 と日向先輩も秋哉の説得に回った。 先輩たちにそう言われた秋哉が小さくため息をついた後、俺を見た。 「本当に大丈夫?」 そう聞かれて、俺は頷く。 「…大丈夫、何かあったらちゃんと連絡するし、もう無理はしない」 そう言うと、秋哉はまたため息をつく。 その後、秋哉は俺の頭に手を置いて小さく微笑んだ。 「………分かった。休み時間にはまた来るから」 そう言われて、俺は頷いた。

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