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第443話 秋哉
放課後、佐倉先輩が生徒会室に来るなり、緋桜を仮眠室に連れていってしまった。
先輩が人目を避けるってことは、他には知られたくない事なんだろうけど……
緋桜と何を話してるのかすごい気になる。
そう思って、俺は仮眠室の方にチラチラと視線を向けていた。
仮眠室を気にしていると、別のところからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
「………なんですか?」
そう言って俺は、笑い声の主を少し睨んだ。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ」
「……そんなんじゃないですよ」
いまだにクスクスと笑う宮藤先輩に、俺はそう反論した。
別に心配している訳じゃない。
ただ、緋桜が佐倉先輩と二人きりっていうのがちょっと面白くないだけ。
………って、佐倉先輩に嫉妬するとか、俺ってどんだけ心が狭いんだ!?
俺は緋桜と二人きりになってる佐倉先輩に嫉妬してる事に気付いて、思わずうつ伏してしまった。
そんな俺を見て、宮藤先輩が更に笑った。
しばらくして、緋桜と佐倉先輩が戻ってきた。
戻ってきた緋桜をじっと見てるとパチッと目が合う。
その瞬間、緋桜は俺から目線を逸らした。
目線を逸らした緋桜はどこか気まずそうにしている。
俺は佐倉先輩が緋桜に何か言ったんじゃないかと思って、今度は先輩を見た。
そうすると先輩と目が合う。
その瞬間、先輩はニヤニヤと笑い始めた。
緋桜と佐倉先輩が何を話してたのか気にはなるけど、今は仕事を進めるのが先だと思って、俺は取り敢えず仕事を片付ける事にした。
「緋桜と何話してたんですか?」
しばらく仕事をして休憩してる時に、俺はこっそりと佐倉先輩にさっきの事を聞いてみた。
「そんな心配しなくても、ただ相談を受けてただけだって」
「……相談?緋桜が先輩に?」
そう言って、俺は首を傾げた。
緋桜が先輩に何を相談するんだ?
「………お前、今すごい失礼な事考えてるだろう?」
「え!?……いや、そんな事はないですよ」
図星をつかれて、俺は思わず先輩から目を逸らしてしまう。
「俺だって誰かから相談されることだってある」
そう言って先輩は少し機嫌悪そうにする。
「……すいません」
俺が謝ると、先輩は『まぁいいや』と言った。
「…で、緋桜は何を相談したんですか?」
「それを俺が教えるわけないだろう」
先輩にそう言われて、俺は納得する。
いくら先輩でも個別で受けた相談を易々と他人に教えるわけないか。
「でもまぁ、そのうち中村からちゃんと話すと思うから、それまで待っててやれ」
そう言って先輩は俺の肩をポンポンと叩く。
俺が頷くと、先輩はフッと笑って仕事に戻っていった。
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