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第444話
佐倉先輩から提案されたのは、まずは秋哉を平気になること。
って言われても、どうすれば平気になるんだろう。
くっつけば平気になるのかな。
そう思った俺は、家に帰ってから取り敢えず秋哉にくっついてみた。
「…………あのさ緋桜?さっきからどうした?」
秋哉が少し戸惑ったように言う。
まだ秋哉から触られるのは身構えないと無理だけど、俺から触れることは出来る。
でも自分からでも、抱きついたりはまだ怖い。
だから、俺は取り敢えず家に帰ってからずっと秋哉の手を握っていた。
「……今のままじゃ駄目だと思って、佐倉先輩にどうしたら良いか相談した。そうしたら、まずは秋哉を平気になれって………」
そう言うと、秋哉は大きくため息をついて顔を押さえてしまった。
………やっぱりずっと手を握ってるなんて鬱陶しいよね。
「……ごめん、やっぱり嫌、だよね」
そう言って、俺は握っていた秋哉の手を離そうとした。
その瞬間、今度は秋哉が俺の手を握ってきて思わず体が揺れた。
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(秋哉side)
家に着くなり、緋桜が突然手を握ってきた。
緋桜から手を握るなんて滅多になくて、緋桜の対人恐怖症が再発してからは皆無に等しかった。
そんな緋桜が突然手を握ってきて、さすがの俺も驚いた。
どうしたのかと思ったけど、緋桜が少し深刻そうな表情を浮かべていて、俺は取り敢えずそのままにしてみた。
そのまま放っておくと、緋桜は手をつないだまま、ずっと俺に着いてきた。
その様子を佐々木も驚いてたけど、緋桜を見て何か察したらしく、その事に関して触れることは無かった。
ご飯を食べる時は手をつないだままだと流石に食べられないからその時は離してくれたけど、食べ終えるとまたすぐ手をつないできた。
で、今は俺の部屋まで着いてきていた。
緋桜はこの家に戻ってきてから、俺の部屋に来るのは極力避けていた。
緋桜と手をつなぐのは当然嫌じゃない。
むしろ緋桜から手をつないでくれるなんて嬉しいくらいだ。
でも流石に何で急にこんな行動を取り始めたのか、理由が気になった。
聞いてみると、佐倉先輩の入れ知恵らしい。
まぁそんな気はしてたけど、でもこの『手をつなぐ』っていうのは緋桜が考えたんだろうな。
ただ、先輩の入れ知恵とはいえ、緋桜が俺の為にこんな行動を取ってくれたってとこは結構キタ。
そう思って、俺はため息をついて顔を押さえた。
ただ俺のこの態度が、緋桜は嫌がってると取ったらしく、手を離そうとした。
俺はそんな緋桜の手を逆に握り返した。
俺が手を握ったことで、緋桜が驚いた表情で見てくる。
「嫌じゃないよ。ただ、ちょっとやり過ぎ」
そう言いながら、俺は緋桜をソファに押し倒した。
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