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第448話
『寂しい』と言葉にしてしまうと、それが波紋のように広がった。
それはどこまでも広がって、自分ではどうすることも出来なかった。
『寂しい』『側に居たい』そんな気持ちが止めどなく溢れてくる。
これは俺の我が儘だって分かってる。
でもどうしようも無くなって、俺は部屋を出た。
廊下を音を発てないように歩く。
電気を着けてないから真っ暗で何も見えないけど、そこまでの道のりは体に染み付いていた。
目的の部屋まで来ると、少し途方に暮れた。
勢いで来たは良いけど、いざ目の前にすると躊躇してしまう。
ついさっき追い出されたばかりなのに……
迷惑がられるかな。
また追い出されちゃうかな。
……でも、もう一回だけ……
もう一回だけ顔が見たい。
そう思って、俺は意を決してドアをノックした。
ドアをノックしてしばらく待つ。
待ってみたけど、中から反応は無かった。
………もう寝ちゃったのかな。
そう思って、俺はその場に座り込んで膝を抱えてその間に顔を埋めた。
いつまでもここに居ても仕方ないのは分かってる。
待ってても意味が無い、それも分かってる。
でも、なんとなく動く気になれなかった。
「…緋桜?」
どれくらい経ったのか、上から声がして見てみると、秋哉が驚いた表情をして見下ろしていた。
秋哉の顔を見た瞬間、さっきまでの寂しい気持ちが嘘のように消えた。
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