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第450話

部屋のドアが開いて秋哉が出て来て目が合うと、その瞬間に秋哉が慌て出した。 俺はなんでこんなに慌ててるんだろうと首を傾げる。 そうすると、秋哉は俺の前にしゃがんで目の下を指でそっとなぞった。 その指が濡れてて、俺はそれで初めて自分が泣いてる事に気付いた。 その後、秋哉がどうして泣いてるのか聞いてきたけど、『寂しい』も『側に居たい』も俺の我が儘だから答えられなかった。 秋哉が俺の為に距離を置いてくれてるのに、その俺が我が儘を言うなんて許されない。 そう思った。 でも秋哉はそんな俺に『大丈夫』と言ってくれた。 その言葉で必死に押し殺していた気持ちが溢れ出た。 俺は気付いたら『側に居たい』と言っていた。 秋哉は『一緒に居よう』と言って『おいで』と手を広げた。 俺は他には何も考えられなくて、秋哉の腕の中に飛び込んだ。 「落ち着いた?」 そう聞かれて、俺は頷いた。 秋哉に連れられて部屋に入ると、秋哉は俺が落ち着くまで抱き締めてくれていた。 俺が落ち着いたのを確認した秋哉が少し体を離した。 秋哉が離れた事でまた寂しさが襲ってきて、俺は咄嗟に秋哉の服を掴んだ。 「…緋桜、本当にどうしたの?」 さすがに俺がおかしいと思ったのか、秋哉が心配そうに覗き込んでくる。 「………分からない。なんか、急に寂しくなって……」 なんでこんなに心細くなったのか分からない。 秋哉がすぐに会える場所に居るのに、隣に居ないと思ったら寂しくて仕方なかった。 今も手を伸ばせば届くくらい近くに居るのに、少しでも離れてると不安になる。 「ちょっと距離を置きすぎたかな。でも、俺は緋桜が俺の側に居たいって思ってくれることがすごい嬉しいよ。 ……ねぇ緋桜、緋桜が大丈夫なら今日は一緒に寝ようか」 そう言って秋哉は笑った。

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