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第453話

朝ごはんを食べて、連れてこられたのは秋哉の部屋。 「……ねぇ、学校は良いの?」 「今日は自主休講、緋桜と話がしたくてね。学校には佐々木に連絡してもらったし、先輩たちにはさっきメールを送っといた」 秋哉はそう言いながらソファに座ると、横の空いてるスペースをポンポンと叩いた。 俺はそれに促されて秋哉の横に座った。 隣に座ると、秋哉がじっと見てくる。 俺は居たたまれなくなって、思わず目を逸らしてしまった。 「……どうして目を逸らすの?」 秋哉が少し不貞腐れた感じで言ってくる。 「……秋哉が見てくるから」 「見たらダメなの?」 「ダメ……じゃないけど……落ち着かないから、止めてほしい」 俺が少し俯き気味に言うと、秋哉はクスクスと笑った。 「ねぇ緋桜、触っても良い?」 そう言われて、俺は顔が熱くなったのが分かった。 どうして秋哉が、急にそんなこと言うのかが分からない。 でも秋哉に触れられる事自体は嫌じゃない。 俺だって、秋哉に触れてほしいと思う。 そう思って、俺は小さく頷いた。 俺が頷くと、秋哉が俺の頬にそっと触れてきた。 頬に微かに触れる感触がすると、体が跳ねる。 秋哉の手が俺の頬を包み込む頃には、体が強張って震えた。 …………何で? 秋哉の手なのに。秋哉の手だって分かってるのに、触れられるのが怖いなんて…… そう思うと涙が出た。 こんなのは嫌だって思うのに。秋哉にもっと触れてほしいって思うのに。 その思いとは逆に、体が拒否してる。 「……緋桜、泣かないで」 そう言って涙を拭われて、俺の体がまた跳ねた。 秋哉を見ると、少し悲しそうな笑顔を見せる。 ……本当はこんな顔、させたくないのに。 「怖がらせてごめん」 そう言って秋哉の手が離れていく。 自分が拒否したくせに、離れていく手が寂しいなんて。 俺は離れていく秋哉の手を掴んだ。 「違う!秋哉に触られるのが嫌なんじゃなくて………」 何て言っていいのか分からない。 俺は上手く言葉が見つからなくて、そこで口籠ってしまった。 「大丈夫、分かってるから」 そう言う秋哉を見ると、さっきの悲しそうな笑顔じゃなくて、優しく微笑んでいた。 秋哉の手を掴んでた俺の手を、秋哉が握り返してくる。 「ねぇ緋桜、少しこれからの事を話そうか」

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