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第454話 秋哉
話をしたいと緋桜を部屋に連れていくと、緋桜は少し戸惑っていた。
取り敢えず、緋桜をソファに座らせた。
話をしたいといってもどう切り出そうかと思って緋桜を見てると、緋桜が気まずそうに目を逸らした。
ほぼ無意識に見ていた俺も悪いけど、目を逸らされるとちょっとショック。
見たらダメなのかと聞くと、緋桜は少し顔を赤らめながらダメじゃないけど、止めてほしいと言った。
その時の緋桜がどうにも可愛くて思わず笑ってしまった。
その後、緋桜に触っても良いかと聞くと、緋桜の顔が更に赤くなる。
緋桜は少し考えた後、小さく頷いた。
許しが出たことで、俺はそっと緋桜の頬に触れた。
触れた瞬間、緋桜の体が跳ねる。
緋桜の頬をゆっくりと包むと、緋桜は目をギュッと瞑って、体を強張らせて微かに震えていた。
……分かってはいるけど、やっぱりちょっとキツいな。
緋桜にこういう反応されると、俺では駄目なんだと思い知らされる。
そんな事を考えていると、緋桜の頬に触れていた手に冷たいものが触れた。
見ると、緋桜の目からポロポロと涙が流れていた。
俺は『泣かないで』と、緋桜の涙を拭う。
緋桜はそれにすら拒絶をみせる。
その瞬間、緋桜と目が合う。
緋桜は申し訳なさそうにしていて、俺はそんな緋桜の笑顔を向けた。
その瞬間、緋桜がまた泣き出した。
………相当怖がらせちゃったかな。
そう思って、俺は緋桜から手を離そうとした。
その手を緋桜が掴んできて、俺は一瞬驚いた。
緋桜は『違う』と言う。
俺に触られるのが嫌じゃないと言う。
緋桜は怖がってたんじゃなくて、俺を拒否した事に泣いてたのか?
そう思って緋桜を見ると、緋桜はギュウと俺の手を握ってくる。
もしかしたら違うのかもしれない。俺の自惚れかもしれない。
それでも良い。
俺は緋桜が、俺の事を考えてくれてる事が嬉しかった。
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