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第6話

 ため息ひとつ、股間に手をかぶせていった。とはいえ独特のむず痒さも相まって、プチプチをつぶす感覚で和毛(にこげ)をじゃらつかせるのは満更、気色悪いものでもない。飼い馴らされちゃって、と苦笑がにじんだぶんも鈴口を引っかいてやった。 「秒で射精()せよ」  ペニスに力がみなぎり、莉音は反射的に耳をそばだてた。放課後の喧騒は遠くて突然、教師なりが資料室を訪れる可能性は低いだろう。だが万一ということがある。  幸か不幸か三神が好むポイントも、快感を引き出す力加減も熟知している。正しくは仕込まれた。なので釘を刺したとおり秒で昇天させるべく、やんわり握って裏筋に指を這わせる。  この、いかがわしい関係を端的に言えばクラスメイト以上、セフレ未満だ。未満と但し書きがつくのは、しごきっこどまりで挿入には至っていないからだ。もっとも至る予定など、まったくないが。  そもそも、ご子息のケアラーを務める羽目に陥ったのは、あくどい手口で退路を断たれたせいだ。  二年生に進級して初めて同じクラスになっても、いちども口をきいたことがなかったのにかかわらず、三神は特別勘が鋭いのかあっさり見抜いた。秀帆と廊下で立ち話をしているところに通りかかったさいにピンときた、という。  ──おまえ乙女のツラさらしてて、一発でバレバレだって──三神談。  以来、弱みにつけ込まれる形で、たびたび利き手をこき使われてきた。ブルーチーズの癖が強い味にいつしか慣れるように、抵抗感が薄れつつあるのは我ながらひく。現に羽毛のタッチでくびれを刺激して、雫を導き出すコツさえ摑んだ。 「神の指づかい。つか、立花先輩のをしこってるつもりで俺のをしごいてりゃ上手くもなるか」 「うるさい、早くイケ」  猛りが脈打つと、得体のしれない生き物が蠢いているように感じられて皮膚が粟立つ。その反面、鼓膜を震わせる息づかいが荒くなるにつれて優越感に似たものが湧きあがり、莉音のそれもいきおい萌す。 「ギブ・アンド・テイク……な」  スラックスの中心をひと撫でされた。浅ましく喉が鳴り、前立てが丸みを帯びる。男の悲しい(さが)だ。純愛路線を歩んでいても、いや、歩んでいるからこそ行き場のない想いはいびつな欲望に変質して捌け口を求める。  黒目がちの目が潤み、すべらかな頬が紅潮するのにともなって、視線の先で喉仏が上下した。と同時に、ただでさえ持ち重りがするペニスがいちだんと体積を増した。  莉音はぷいと横を向き、それでいて期待感に震える指でスラックスをくつろげた。下着をずらすか、ずらさないかのうちに包皮をめくり下ろされる。

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