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第7話

 ただ右利きと左利きが握り合った場合、あるあるだ。白いシャツに包まれた腕と、むき出しのそれが、足の付け根でひしめく。せせこましいエリアで攻防を繰り広げるさまが滑稽だ、と思う。 「おまえ、色白じゃね? ちんぽまで童貞色のベビーピンクな」 「昭和のスケベおやじ臭ぁ」  しなり具合を測るように弾ませるのに、荒っぽくしごいて返す。ぐぐっと反り返るのに対して、ドMかよ、と腹の中で毒づく。  ふと、ほっそりした指が布を蛇腹に寄せては伸ばす光景が脳裡をよぎった。秀帆が縫い代に癖をつける要領で、はしたない自分のこれをいじってくれたら感涙にむせぶのだろうか。それ以前に恐れ多さのあまり萎えてしまう可能性、大だ。  莉音はスチール棚をがたつかせて頭を打ち振った。秀帆に淫らな役を割り当てることじたい、冒瀆だ。  だが、仮に秀帆が超能力者だとする。一向に戻ってこない後輩の居場所を透視してみると、そそり立った二本のペニスのそれぞれに指が巻きつく光景が脳内のスクリーンで展開されるのだ。顰蹙を買うくらいならまだしも、心底嫌われて半径百メートル以内に立ち入るのを禁じられてしまうかもしれない。  想像で哀しくなったわりには、花穂(かすい)は蜜をはらむ。 「もう、ぬるぬるだ。マジ濡れやすいのな」 「悪いか、体質の問題……ん、んっ」  他人の指さばきで高められるのは、もどかしさがつきまとう。こういうふうにしてほしいことを、知らず知らず怒張をモデルにほのめかしてしまう。  鈴口に指で蓋をして、呻かせた。アレンジを加えて蜜を塗り広げるように穂先をつつかれると、悩ましい吐息がこぼれる。  もっとも、苦み成分の含有量が九十九パーセントを超える代物で、桜色に染まった(おもて)が自嘲的にゆがむ。 「エ……ロ」  生唾を呑み込む音が、反響した。淫技を駆使すれば蕩けた表情(かお)をガン見し放題、と言いたげにまで撫で転がす。さらには裏筋同士が密着するふうに調節すると、両方まとめて莉音に握らせた上から、自分の手で包んだ。準備完了とばかりに(みだ)りがわしく腰を揺すりながら、緩急をつけて動かす。  スチール棚を背景に、彼我の下肢がもつれ合って蠢く。ぬめりを助けに摩擦を繰り返すにつれて加速がつき、淫靡な水音がますます高まる。悦びを伝達するニューロンが増設されたように、びりびりするものが背筋を駆け抜けるのがたまらない。 「ん、ヤバ……三神、あざとくね? これ、効く……」 「もう降参か、根性ねえの」  と、せせら笑いが耳朶をかすめた。得意顔を睨み返し、だが快感の波が押し寄せてくれば、すがるものを求めてしなだれかかってしまう。

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