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第2話

僕を助けてくれた男の人は、降り続ける雨の中僕を抱えてどこかに向かう。 その間も優しく声をかけ撫で続けてくれた。 とある建物に着くと、重たそうな扉を押し開け中に入った。 その瞬間ツンと鼻にくるような消毒の臭いがした。 ここ病院…? 「…たまー?居るか?」 男の人が奥に向かって声をかけると、白衣を羽織った如何にもお医者さんらしい格好の人がのそのそと出て来た。 「悪ぃ。もう午前診終わってたか?」 「あぁ。でも急患なんてよくある事だし…。」 少し気だるげに話す医者に抱きかかえられ診察台に乗せられた。 さっきまで腕の中が温かかっただけに、診察台の冷たさに身震いした。 「ごめん…ごめん。こんな所に乗せられたら恐いよな。」 震える俺に眉尻を下げ先ほどとは打って変わって、優しげな表情を向け話しかけてきた医者の手に頭を擦り付けた。 「この子の身体びしょ濡れだね。野良犬?」 「あぁ。家の前に倒れてたから連れて来たんだ。」 体や手足それから顔を撫でるように触られた。 「目立つ怪我はないようだね。それにしても身体冷たいな…。低体温症になってるね。」 そう言うと医者は、僕のおしりの穴に体温計を差し込んだ。 やだやだっ!何入れてんの?!早く抜いてってば! 医者に抗議する僕。 だけど耳に響くのは、仔犬のキャンキャンと言う鳴き声だった…。 「おっ!急に元気になったな。」 体温計が測定完了を知らせると、ようやく抜いてくれた。 すると本能からなのか。すかさずお尻を舐めようとした自分の行動に驚いた。 僕、本当に犬になっちゃったみたい…。 普通ならこんな汚い所に顔を近づける事すら嫌なのに。 「脱水症状も出てるから、点滴して身体温めて様子見ようか。」 医者は僕を再び男の人の腕に戻し奥の部屋に入って行った。 やっぱりこの腕の中が1番落ち着く。 無意識に身体を擦り付けていると、首元をさわさわと撫でられた。 「…可愛いやつ。汚れてて何犬か分かんないな?雄なのは分かるけど…。」 彼は、男性なのに綺麗と言う表現が良く似合うとても整った顔を優しげに綻ばせてクスリと笑った。 「はい、お待たせ。伊織…そのまま抱きかかえて腕だけ見えるようにして?」 助けてくれたこの綺麗な人伊織って言うのか…。 って…僕今大ピンチじゃない? 伊織の腕の中で身動きが取れないように固定された。 医者が、僕のケモケモの腕を掴み消毒の滲みた脱脂綿で拭った後、鋭い痛みと共に針が刺さった。 ギャンッ!! 痛くてバタバタしても伊織は、慣れてるようで微動だにせず、呆気なく点滴を繋がれてしまった。 「保温器が温まるまでソファーに座ってて?」 「…そういえば今日は、ネコ居ないんだな。」 「あ~ぅん…。まだ寝てるよ。昨日頑張り過ぎたから…。」 ネコ?…ここの飼い猫かな。 どんな子なんだろう? 僕、けっこう猫好きなんだよね。 「あ、噂をすれば…何とやら…。おはよー!」 医者の視線の先には、男の人が立っていて、左足を少し引こずるようにしながら近づいて来た。 艶やかな黒髪にすらりとした長い手足。 瞳は琥珀色とブルーに近いグレーのオッドアイだった。 すっごいイケメンだぁ! でも何でネコって呼ばれてるの?アダ名だよね? 見た目は若干猫背だけど…。 もしかしてとてつもなく猫舌? それともすっごい猫なで声だったりして? 「…俺が温めてやる。」 あ、話し声は普通だ…。 「え?…ネコ、それは母性本能?まさか出来ちゃった?」 「そんな訳ないだろ…。発情期じゃないんだから。人肌の方が安心できると思って言ってんだ。貸してみろ。」 隣に座ったネコと呼ばれる男性が、僕を抱えあげ服の中に入れてきた。 ほど良く筋肉の付いた分厚い胸板に密着させ優しく僕の背中を擦る。

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