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第7話
朝早くに来た病院には、まだ患者は1人も居らず静まり返っていた。
院内でリュックサックから出してくれて、伊織に抱えられたけど突っ張って抗議してみた。
僕はすっごく機嫌が悪いんだよ!
そんな僕を宥めるように背中を撫でながら受付を始めた。
するとジトーと、見られているような視線を感じて受付カウンターを見上げた。
そのカウンターには、黒猫がちょこんと座って居た。
黒猫は艶やかな短毛に長い足をお行儀良く揃えて、しっぽをふわぁんふわぁんとしなやかに動かしている。
整った顔立に威厳を感じさせる眼は、琥珀色とブルーのようなグレーのオッドアイだった。
あれ?このオッドアイ…何処かで見たような。
(おい。…小豆、伊織を困らせるな。)
(…ん?何で名前知ってるの?)
(お前の脳みそも豆粒程度なのか?)
(あっ!…思い出した!その口の悪さはネコだぁ!)
そうだ、そうだ!
前は人間の姿だったから分かりずらかったけど、この口の悪さはネコだ。
でも何で猫の姿なんだろ?
(…あ?この姿なら昼寝してても文句ないだろ?)
あぁ…。サボるためなのか。
書き終わった問診票をネコに渡すと、器用に前足を使ってパソコンに打ち込み出した。
凄っ!猫の姿でそんな事も出来ちゃうんだ…。
「伊織、小豆ちゃん、おはよう。診察室に入って。」
診察室から出て来た珠希さんに呼ばれて、伊織に抱えられたまま中に連れて行かれる。
ストップ、ストップ!注射したくないー!!
慌てて騒いだけど、診察室の扉を閉められてしまった。
それでも抵抗して、キャオン…キャオン…と鳴き続けていると、何処からかバフバフ…、キャンキャンキャン!と他の動物達の鳴き声が聞こえてきた。
(朝からうるさいぞ。)
(お母さん!お母さんっ!)
その鳴き声と共に頭の中に響いて来る意思?のようなモノを感じた。
「ありゃ。入院してる子もアズちゃんの鳴き声に釣られたな。」
「…朝早くから騒がしてゴメンな。入院中の子にも悪かったな。」
「よくある事だよ。でも診察室に入って直ぐこんなに嫌がられるとは思わなかったな…。」
「あ、それは家にいる時から機嫌悪かったから。」
「そうだったんだ。それならいいや、とりあえず体重測ろっか。」
珠希さんがそう言って、ジタバタしている僕を軽く抑えると、診察台からピピと音が鳴った。
ほぇー!これで体重測れるんだ。って関心してる場合じゃなかった。
それって…。その棒って!
「お熱計るね。よしよし上手だよ。」
やっぱり体温計だ。
うぅっっ。僕のお尻に突っ込んできた…。
最悪だ。気持ち悪い…。
「うん。バッチリ予防接種できるね。
以前診た時よりも身体つきがしっかりしてきてるし。良好良好!」
「良かった。たまからお墨付き貰えると安心できるわ。」
嬉しそうに話してるけど、こっちは注射の事で頭がいっぱい…。
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