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第11話

あれから2時間程経ったが、まだまだネコのスパルタ指導は続いていた。 (…尾は引っ込めるんだ!…幾らケツに力入れても引っ込まねーって。) (痛いっ!お尻叩かないで。) (悪ぃ…ついムキになっちまった。…にしても尾と耳は、難しそうだな。先に脚の握りを手にする練習をした方が良さそうだな。) 獣人だから、獣から人間の姿には難なく変われるものだと思っていた。 でも正直、めちゃくちゃ難しい…。 2時間経っても全く変化がない上に、変に力を入れ過ぎたお尻がプルプルしてて、既に筋肉痛になっている。 それに元々なかったしっぽをどう扱っていいのか分からない。 感情の起伏で無意識に動くしっぽを抑え込むのは容易な事ではかった。 (…分かった。手のように開く感じだよね。) 脚先に力を入れつつ、指の1本1本をイメージして外側に動かす。 …こう。ぐぐっと! 何度やっても、指先がピクピクと震えただけで反応無し…。 何度も挑戦してたら、疲れて脚が吊りそうになった。 ネコもここまで付き合ってくれてたけど、飽きたようでデスクの上の白衣に丸まって眠ってしまった。 それでもめげずにやり続けていると ついに!脚の指がググーっと外側に動いた! (おぉ!…今動いたよね?ネコっ!やっと脚が動いたよ!) (ん。…人間の手になったのか?) (…それはまだだけど。脚先が動いたんだよ!外側に!…ほら見て、ねっ?) 眠たそうな顔をして、床が見える所まで起きてきてくれたネコに、少し動かせるようになった前脚を見せた。 (初めてにしては良く出来たな。) よっしゃ!ネコに褒められた! ネコは、軽々と机から椅子に飛び移り、ストンと僕が居るタオルの方まで降りて来た。 (頭…こっち。) なに?…頭? よく分かんないけど、言われるがままに頭を前に出した。 すると額に肉球を押し付けられて、ポンポンと頭を叩かれる感触があった。 これは…ネコなりに頭を撫でてくれてるって事なのかな? 「2人とも遅くなったけど、お昼食べよー!」 満面の笑みを浮かべて部屋に入って来た珠希さんの姿にネコは、何事も無かったかのようにそそくさと部屋を出て行ってしまった。 ちぇ。せっかく褒めてもらってたのに…。 受付カウンターの奥にあった階段で2階に上がると、ご飯のいい匂いがしていた。 この動物病院も伊織の店と似た造りで、2階が住居スペースになっていた。 ホカホカと湯気が立つ皿の中には、チャーハンが盛ってあった。 「ネコと特訓してお腹空いたでしょ。…口に合うか分からないけど。」 困ったように眉を下げて、皿を差し出してくれた珠希さん。 大きめの具材がゴロゴロと入ったチャーハンは、まさに男飯って感じだった。 人間の姿になって、バスローブを羽織って来たネコは、早々にテーブルについてご飯を食べ始めた。 「伊織の飯より見た目はアレだけど、味は旨いから。食ってみろ?」 ネコの若干棘のある言い方に珠希さんも笑っていた。 このやり取りも2人の中ではいつもの事なんだろう。 僕も今日一日で、ネコのツンデレにだいぶ慣れた。 そして…だ。 どうしてこうなったんだろうか…。 (…自分で食べれるから。) 「スプーン持てないだろ?…もしかして、いつも犬食いしてんのか?」 (…え?) 「ん?…なんだ?」 (い…伊織が、食べさせて…くれてる。) 「なら、問題ないだろ。ほら。」 ネコがニヤニヤ笑いながら、スプーンを口元に近づけてくる。 うわぁ。ネコに食べさせてもらう事になるなんて…。 何がなんでも早急に人間の姿を習得しなくちゃ。 こんな屈辱を何度も味わうのは辛いよ…。

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