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後日猥談 ─初夜─12
「キツいです、冬季くん……! もう少し力を抜いていただけると……っ、ありがたいんですが……っ」
「あぁっ……むりっ……そんなのむり……! 僕初めて、なん……ンンッ! ……っ、だよっ?」
「そ、そうですよね……! 無茶を言いました……!」
分かってくれて嬉しいよ、りっくん……!
僕、そんな余裕無い……目も開けられないんだよっ。
そんなの無理だって分かってるけど、出来ればジッとしといてほしい……!
「い、痛くないですか……っ?」
「ンッ……い、たくは……ない……っ」
「本当ですかっ? 痛いでしょう、これは……! だってこんなに狭い……っ」
「はぁっ……んっ……ん、っ……!」
少しずつ少しずつ、僕の呻きで反応を窺いながら挿れてくれてるのが分かるから、りっくんも相当ツラいと思う。
でも苦しい。熱い。呼吸がうまく出来ない。
濃ゆいキスでそれを奪われるよりも遥かに、僕の体がりっくんの侵入にビビっちゃってる。
「りっくん、……っ待って、一回……抜いて、ほし……っ」
「抜いてって……! やはり痛いんですか!?」
「ち、ちが……う、りっくんの顔、見えな……からっ」
「えっ……」
しがみついてるのが枕だからいけないんだ。
僕を貫こうとしてるりっくんが今、どんな顔をしてるのか見たい。狭いナカをこじ開けてるんだから、僕が苦しいのと同じで、りっくんもきっと見たことが無いくらい顔を歪めてると思う。
初めてだとこの体位が一番楽だって、僕もりっくんも知識だけはあったからこうしてるだけで、実際やってみると一人ぼっちで耐えてるような寂しさが襲ってきた。
独りよがりな性欲ばっかりぶつけられた今までの経験なんて、ホントに何の役にも立たない。
「これじゃ、……っキスも、できな……っ」
「クッ……! 冬季くん……っ!!」
「うぅっ……っ、んぁあ……っ!」
息も絶え絶えに訴えると、呻いたりっくんが僕の名前を呼びながらソレを引き抜いた。
ずるん、と先端が抜けてく短な感覚が腰を震わせる。結構苦しかったんだけど、やっぱり全然入ってなかったみたいだ。
「冬季くん……」
虚ろな目で呆然としていた僕の体が、くるんとひっくり返される。そこでやっと、りっくんの顔を正面からまともに見ることができた。
「……りっくん……」
両腕を伸ばすと、りっくんは僕が何も要求しなくても背中を丸めてぎゅっと抱きしめてくれた。
僕もりっくんの背中を力いっぱい抱いて、うっとりと目を瞑る。
……あぁ……これだ。……あったかい……。
「この方が安心する……」
「冬季くん……」
りっくんの体温を肌で感じると、無機質な枕なんかより何倍も何十倍も心が安らいだ。
知識も経験もアテにならない。
どんなに苦しくても、痛くても、僕はりっくんに抱きしめられていたいと思った。
「こうしてれば、少しくらい痛くても我慢できるから……今日全部、挿れてほしい……」
「うッ……! そんなことを言わないでください……。痛い時は……」
「右手を上げる?」
「ふふっ……、それでもいいです」
「分かった」と頷いた僕のおでこに、微笑んだりっくんが優しくキスをしてくれる。
よく見ると、その額には汗が滲んでいた。普段見られない腕捲りもしていて、暑さと必死さが窺える。
「腰を上げてください」
「ん、……?」
「ここに厚みを持たせれば、冬季くんが多少は楽かと」
「あ、あぁ……ありがとう」
すぐにでも仕切り直したいはずなのに、りっくんはこんな時まで優しかった。
僕の腰の下に枕を二つ挟み込んで、自分の挿れやすさより僕の苦痛を減らすことを優先してくれる。
その優しさに感動して甘えた僕が、りっくんの腰を足で挟んだ時はさすがに「こら」って叱られちゃったけど。
「ゆっくり挿れます。我慢はしないこと」
「うん、分かっ……うぅ……っっ!」
僕が頷くと同時に、りっくんの腰が動いた。
りっくんは、片手で僕の背中に腕を回したままホントにじっくりゆっくり挿入を開始した。
ぐちゅ、という粘膜音と共に、さっきの圧迫感が僕を襲う。
「んあ……っ! りっ、くん……っ」
先端を挿れるだけでも、かなりの時間がかかった。
苦し紛れに掴むものが欲しくて、りっくんの白衣の上から二の腕にしがみつく。それでも足りなくて、生地に爪を食い込ませながら拓かれる圧に耐えた。
「冬季くん、息を詰めないで。そんなに吸ってばかりいたら苦しいはずですよ……っ」
僕が呻くから、心配したりっくんがいちいち動きを止めて「大丈夫ですか」と聞いてくる。
全然大丈夫じゃないけど、りっくんの顔がこんなに近くにあって、ずっと僕のことを離さないでいてくれるから……〝大丈夫だよ〟って笑ってあげられた。
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