114 / 268

これで全部俺のもの **

買い溜めた食料を乱雑に玄関に投げ置くと、前回以上に濃いフェロモンの香りに誘われるように、その場所に向かう。 強い酩酊感だ。気持ちが良くなる香り、俺を翻弄するそれは、きいちがヒートになったことを如実に表していた。 息が荒くなり、唾液腺が刺激されて分泌量が増える。下肢は痛いくらい張り詰めて、俺の中の本能をガンガンに揺さぶった。これは、抗えない衝動だ。暴力的なまでの性的欲求が理性を焼き切る。 寝室に入ると、その香りはより一層強くなった。 無意識に舌舐めずりをし、カチャリと金属音を鳴らしながらベルトを外す。布団がはみ出たクローゼット収納。愛しい番はそこに籠もっている。かまくら型のその巣が微かに上下し、はみ出た折れそうなくらい細く艶めかしい足を掴むと、両足を大きく開いた。 発情期で、多分泣きつかれて寝てしまった番の下肢はひどく濡れていて、乾ききった白濁や潮などでおろしたての布団はびしゃびしゃと酷い有様だ。 優しく布団をどかして泣きつかれて眠る番の顔をそっと撫でると、取り出した性器を泥濘んだ蕾に擦り付けた。 「ふぁ、…しゅ、ん…ぁ、ぁあ、あっだめ、ぇっ!」 「っ、ふー‥、ぐ、ぅ…っ!」  ふるりと身を震わせて濡れた瞳が俺を捉えた瞬間、細い腰を掴んで一気に挿入した。 「ぅあ!ぁ、あっあん、ゃ、やぁ、あっああっ!」 「はぁ、っ…はぁ、あっ!く、ぁ…!」 「い、ひゃ、ゃー‥ぁ、あっゃぅ、うー!ふぁ、や、へてぇ…やぁ、ぁだめぇえっ!」 眼の前がチカチカとスパークする。細い腰を掴んで、本能のまま、欲望のままにがつがつと腰を打ち付けた。パタパタと跳ねる足を、膝を持って左右に開かせることで押さえつける。口端からだらしなく唾液を零すきいちの唇に噛み付くように口付けをすれば、薄い舌に吸い付いて何度も己のそれと絡ませる。 頭が、焼ききれるんじゃないかというくらい強い欲望のまま、ただ獣のように貪り食う。首を振り、抵抗するきいちの両腕を顔の横で繋ぎ止めながら、首筋から顎にかけて舌を擦り付けるように舐め上げる。 「ひぁ、ぁっらめ、ゃ、ほん、と…も、やぇ、…へ…」 「くそ、ぁ…くそ、がっ…」 「ン、ふぁ…は、はひ…んぁ、っ…も、ぉく…むり、…ひぁ、う」 「だめだ。開けきいち、ここ、に…」 腰を押し付けるように揺さぶると、奥深くの孔が甘えるように先端に擦りついてくる。その感覚は腰がとろけるほど甘いしびれを伴い、押し開くようにしてきいちのうすい腹を手のひらで押すと、ぐぱりと大きく口を開けて先端は飲み込まれた。 「あ、ぐ…っ!あ、あ゛ぁ、っそ、こぉ、…っ!ひぐ、ぁ、ぁんっ、ゃ、ふぁ、あー‥」 がくんと大きく仰け反った背筋に手を這わし、差し出されるようにして存在を主張する桃色の突起を舌で甘やかすように刺激する。さっきから潮だか尿だかわからない水気のものをびしゃびしゃと揺れる性器から垂れ流すだらしない姿のきいちに更に興奮してしまい、結合部を広げるくらいみちりと根元が膨らんだ俺の性器は、先程から先走りを塗りつけるかのように子宮と思われる中へ何度打ち付けた。 「っぁ、だめ、だ…っ…もう、イく…!!」 「な、か…なかだめ、ぇっ、…ひ、ぁ…」 「出す、あ…で、る…っ」 「う、ぁっ、んー‥!」 ぐじゅ、と濡れた音を立てながらびゅくびゅくと叩きつけるようにして射精した。勢いよく出たそれは、断然いつものよりも量が多く、甘やかすかのように吐き出す先端をぢゅぱ、と何度も吸い付いてくる。やがて溢れ出たそれが結合部から溢れ出て、じわりとシーツにさらなるシミを広げた。 「ぁ、つぃ…ふ、ぁ、…まだ、…でて、ぅ…」 ひくつく胎内は嬉しそうに精液を飲み込み、薄い腹は少しだけふくりと膨らんだ。精液を腹に注がれていることが気持ちいいのか、きいちの顔は、唾液と鼻水と涙でぐずぐずなのにもかかわらず、口元を緩めて赤い舌をちらつかせてその性感に飲まれていた。 「っ、は…きい、ち…」 「ひゅ、んふ…ぁっ…」 ゆるゆると腰を揺らして腰を掴んだ手を胸元に滑らせる。かわいらしくっ主張したその乳首を押しつぶすかのようにして刺激をしながら、何度もその唇を啄んだ。可愛い、可愛い俺の、俺だけの男。 「…ひ、ぅ…」 ぷしゅ、とはしたなく身を震わせながら漏らす。ああ、俺に見つめられてイったのかと理解したら、信じられないくらい征服欲が満たされた。 「きいち、…いいか。」 その白い肌も、俺が散らした赤い跡や薄く皮膚が染まった桃色の上半身、すべて愛おしい。俺の手のひらで、その頬を撫でてやる。 ひくんと性器を締め付けたあと、きちんと理解したの愛しい愛しい俺のきいちは、震える身を緩慢な動作で動かして俺に背を向けた。 「っ、…あぁ…死んでもいい…」 白くなめらかな背を、その細い腰から背筋に沿って、ゆっくりと手のひらを滑らせる。小さく震えながらそっと自ら髪を避けて項を見せつけられると、どうしようもなく興奮した。じゅわりと唾液が分泌され、きいちのフェロモンによって焼ききれた俺の理性は、無意識にきいちの胎内を精液で濡らしながら、擦り付けるように腰を動かすのを止めることができなかった。 「可愛い、かわいいなきいち…俺の、」 「っ、ひゃ…ぁ…む、ね…きもち、ぃ…」 後ろから覆い被さり、両手でその薄い胸を手のひらで隠すようにして指の間で突起を刺激する。 べろりと項を舐めて、キスして、遊ぶように歯をあててやれば、再びきいちは布団を濡らした。 「しゅ、ん…しゅん、…」 「ああ…痛いだろうけど、すぐに済む…」 「っゃ…、」 呼吸が荒い。きっと俺の目は今獲物を捉える目と同じだ。舌で犬歯を確かめる、やけに疼くと思ってはいたが、それは鋭く尖っているように感じた。 両手を後ろから押さえつけるように、指を絡めて布団に押し付ける。 「巣…上手にできたのに、崩しちゃってゴメンな」 「ん、ふぁ…」 「俺の為に作ったんだろ、嬉しかった。」 「はぁ、ぁっ…ぅ、ん…」 ひくん、と体が震え、きいちのフェロモンが再び俺を包んだ。甘えるようなその香りは何時もよりも深く、上等で深みのある香りだ。きっと、天上に咲く花はこんな香りに違いない。 俺のフェロモンも、正しく受け取ったきいちは、服從するように布団に額をつけて項を差し出した。 オメガによる、アルファへの信頼の証だ。 体を寄せ、その香りを堪能するように項に鼻先を埋める。べろりとそこを舐めあげれば、喜びからか、微かにきいちが甘い吐息を漏らす。 もう、これで、俺のもの。 「っ、きゃ、ぅ…!」 その白く柔らかい項を、大きく口を開けで一息に噛み付いた。

ともだちにシェアしよう!