学を初めて抱いたときは、希少で繊細な百合の花を根本から手折ってしまった時のような、そんな罪悪感を微かに抱いた。 「ぁっ、」 花弁は厚みがあり、しっかりしているが傷つきやすい。茎は真っ直ぐ伸びているが折れやすい。 そんな扱いに気を配るような花を、無理矢理手折ってしまったかのような。 薄く、白い腹を手で包み込むようにしてなぞりながら服を押し上げていく。布地はなめらかな肌を滑り、晒された胸元を彩る2つの突起は赤く色づいていた。 「よ、うへい…」 「此処で、抱きたい。」 すり、と学の手を取り手の平に鼻先を擦り寄せ口付ける。しとしとと雨が静かに薄暗い室内を見守る。恋人からふわりと香る繊細な花の香は、熟れていくたびにどんどん芳醇になってきて、末永を酔わせる。 「後で、ベッドつれてけよ」 「ああ、わかった。」 そっと胸元に唇を滑らせ、その尖りを優しく唇で挟んだまま先端を舐めては吸い付く。胸をそらさせるように背に手を添えて、ちゅ、と水音をたてながら弄ってやると、ひくりと肩を震わせて喜んだ。 「ひぅ、っ…きもち…」 「ここも、赤くなっているな。」 「ぁ、っ…も、もっと…シて…」 「ふふ、」 そっと、学の小さな手が頬を撫でながら末永の吸い付く唇に触れた。もう一方も寂しいらしく、まるで期待するような目で見つめてきたので、そのまま反対側は見せつけるようにしてべろりと乳首を舐め上げた。 「ぁ、ぁ、っ…やだ、こっち…みんな…」 「見られて方が興奮するのだろう？」 「ちが、っ…」 「ここを、こんなに濡らしてるのに違うのか。」 無骨な手が、ショートパンツの隙間から侵入する。ボクサーの裾から指を一本、蕾をなぞるようにして縁の周りを指で辿る。甘えるようにきゅうと収縮したそこは、滴るほど濡れた学の先走りによってぬめりを帯びていた。 「どうされたい？なにをしてほしい…。」 「そ、そこ…っ…きもちくして…」 「素直でいい子だ。」 「ふ、ぅあ…っ…」 ショートパンツ越しに、ぱくりと膨らんだそこを口に含む。ビクンと腰をはねさせた学の両膝を大きく開くと、唾液でわざとシミをつくるようにしながら強弱をつけて布越しの性器を刺激した。 「は、ぁ…っ、あ、熱い…やだ、それやだ…」 「なんでだ？前にしたときは喜んでいただろう。」 「喜んでない、んぁ、っ…あ、ち、ちゃんと…して…」 「まだだ、大人しくしていろ」 とぷりと先走りが吹き出る。ねっとりとした粘着質な音が、布越しにねぶる舌によってどんどんと大きくなっていく。唾液と先走りで、張り詰めた性器にまとわりつく布地は恥ずかしいシミをどんどんと広げていき、ぬちぬちと音を立てながら先走りを利用してぬくりと差し込まれた中指に、びくりと膝を跳ねさせた。 「や、だ…やだよぉ…っ…せ、せっかく…っ、今日の為に買ったのにぃ…っ、」 「…ん？」 「っ、き、今日…たのしみだった、からぁ…っ…ふく、かって…お、おれ…っ…」 はふはふと熱い吐息を漏らしながら、涙をためた眼差しで末永を見つめる。学が履いていたグレーのショートパンツは、何を着ていくか悩んだ末新しく購入したものだった。夏だし、暑いし、それを理由に足を出したっていいだろうと、今まで履いたことなかった膝上までのショートパンツを買ったのだ。 末永は、褒めてくれるかな。とか、少しは期待したのに、行きがけに起こった出来事でそんな空気にもならなかった。 せっかくお洒落してきたのに、挙げ句にこれだ。学は気持ちいいし、恥ずかしいのに、ちょっとだけ切ない気持ちになりながら、結局こんな場面になって自分でバラしてしまった。 くてりとソファーの座面に体を預けながら、末永の唾液と先走りでしとどに濡れた股ぐらに、学は情けなくなって少し泣いた。 「…そうだったのか。」 末永は、まさかそんなに楽しみにしてくれていたとは思わず、少しだけ罪悪感を感じた。確かにショートパンツは珍しいなとは思ったのだが、褒める前にナンパされている様子に苛ついてしまいタイミングを逃してしまっていた。 今更似合っているとか言ったところで、この有様だ。ここは素直に謝ろうと、そっと学の背に手を差し込んで優しく抱き寄せた。 末永の手によって抱き起こされた学は、末永に甘えるようにギュウッ、と抱きつくと、肩口に顔を埋めてすり寄る。 そんな弱った学の甘え方に、末永の喉は獣のようにぐるりと鳴ったが、かろうじて理性が待ったをかける。 「すまない、その…」 「ん…俺も、悪いし…いいよ…」 「でも、学が俺の為に服まで悩んでくれたのは…嬉しい。本当に可愛いなお前は…」 小柄な体を抱きすくめながら末永が言う。耳元で、それも酷くかすれた声で噛みしめるように囁く末永に、じわりと耳まで熱を持つ。 「ん…っ…、うん…」 素直に照れながら小さく頷くと、ぎゅうっ、と抱きつく力を強めた。末永の胸の奥、柔らかい部分を甘く刺激させる学は本当に質が悪い位に愛おしい。 もう本当に、どうしてくれようかと大真面目に悩んでしまう程に、末永は学を愛していた。 じくん、と末永の犬歯が疼く。愛しているからこそ、痛い思いはして欲しくない。末永は学とヒートを迎える度に、柔らかそうな項を見つめては深くその牙を突き刺して己のものにしたくてたまらない。 それができないのは、怖がらせたくないからだ。 「んぅ、っ…」 「んっ、」 鼻先を擦り合わせ、額を重ねて何方ともなく唇を重ねる。何度か甘く吸い付いた後、学の薄い舌が末永の犬歯をぺろりと舐めた。無意識だろうが、まるで求めるようなその行為に触発され、末永はぶわりとフェロモンを膨れ上げさせた。 「ひぁ…っ…！」 その強い雄の香りに大きく体を反応させた学が、雌の部分を強く刺激されてヒートを誘発させられる。 体の神経を直に舐めあげられるような強い痺れに屈服し、学は腰を甘く震わせながら我慢できずにお漏らしをした。 勿論末永の膝の上で、なんならソファーの上だ。じわじわと熱い奔流がボクサーの中で流れを変えて尻までその熱を広げていく。信じられないくらいに気持ちがいいし、せっかく買ったグレーのショートパンツもびしょびしょに濡れた。 犬の嬉ションの様に端ない姿を晒し、白い太ももを濡らし貼り付いたグレーの生地は、もはや色を濃くして黒っぽくなっていた。 ちょろり、と性器の先端であろう部分から漏れた最後の数滴に、末永の理性は呆気なく焼ききれた。