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誰にもやらない **

学は何度も末永の唾液を飲み込むようなキスをしながら、そのたびに腹の中を作り変えられる様な激しい熱の塊をその内側に巡らせる。 ああ、死んでしまいそうなくらいに気持ちがいい。脳がとろけて、胎が喜んで、そして背骨を抜かれたように全身の力が入らない。これを教えてくれたのは紛れもない、目の前で獣のように腰を打ち付ける俺の、 「蕩けているな、っ…はぁ、くそ…あまり、そんな目で見ないでくれないか…、っ」 ぽたりと落ちた汗の一滴でさえ酷く愛おしい。 無様に喚き散らしてしまいたいくらい、切なく胸が泣くのだ。もっともっと、壊してくれと泣くのだった。 「ひぁ、ぁ、あっ…ぁンっも、もぉ…っ、や、ああっ…」 「ああ、っくそ…なんでこんな、可愛い…はぁ、あっ…」 「ふぁ、す、すき…んぁ、っ…よーへー‥ す、きぃ…ひぃ、うっ、」 腰を大きな手で鷲掴む。理性がきいていないのかその力は痛いくらいなのに、パンパンと末永の腰を打ち付けられながら、会陰にぶつかる茂みや、尻に当たる袋を直に感じるたびに、犯されているという被虐思考が甘やかな痺れに直結する。 末永は、サディストの癖がある。 暴力的なものではない、意地悪なのだ。それはとてもたちが悪く、何を学が望むのかわかった上で行う。 「おまえ、は…どうされたい、俺に…っ、なにを、されたい…?」 「ぁ、ぁ、あっ!そ、そこぉ…ぐりぐりしない、れ…っ、も、やぁあ!」 「いやなものか、こんなに俺を離さない癖に。」 「ーーーーっ!!!」 大きな手が薄い腹を押す。前立腺をひどく摩擦されて燃えるような刺激に囚われていたのに、臍の下をぐっ、と押されるとだめだ。 じゅぱ。 学の奥の奥、素直な部分がぐぱりと涎を垂らして期待する。ここにぶち込んでほしい。そうはしたなくお願いしたくなってしまう、そんなスイッチがそこにある。 末永だって眉間にシワを寄せて、こめかみに血管を浮かばせながら襲い来る射精感を何度もやり過ごしている癖に、口元に歪んだ笑みを浮かべながら熱い手のひらで学の体をいやらしく撫で上げては、そのペンだこのついた指で胸の突起を挟んで引っ張る。 「ひゃ、んっあっあぁ、あっや、やだ、ぁ!ち、ちくびっ、も、やぇ、へ…っ…」 「ここも、っ…お前の気に入りだろう…すぐ差し出してくるのに、初なふりをする…」 「んぁ、あっ…や、ぁ、あっ…かまな、いれ…ぁ、あっ…」 末永が胸の突起に吸い付いては甘く噛む。前かがみになるせいで插入が深くなるので、脳が焼き切れるのではないかというくらいの生なましい快感が体の内側で存在を主張する。 「やらぁ、ぁ、も、や、むり…むり、ぃ…」 「学。」 「も、ぉく…ぉく、こないれ…ゃだあっ…」 「ほら、学…」 素直になりなさい。 がじりと耳朶を噛まれ、ぶしゅりと漏らす。乾き始めていたソファーを、再びじんわりと色を濃くする水流が薄い腹を辿り腰の下に広がった。 「あ、あ、あ、あ、」 もう、もうだめだ。これ以上、取り繕うことなんてできない。もう無理だ、バカになる、こいつのせいでバカになってしまう。 「もっと、してぇ…っ…」 ぶるりと身を震わし、泣きながら自分の髪で視界を遮る。信じられないくら位、甘えたな声が出た。 にゅる、と形をわからせるかのように、末永の性器は律動を緩める。学のスイッチが入ったのをみた末永が、わざとそうした。 「も、っと…まなぶの…、ぉく…ひら、ぃて…じぶ、んじゃ…できな、っ…」 「あぁ…最高…。」 「よ、へ…うれ、し?…まな、ぶが…っ、えっちなの…ぅ、れし…?」 小さな手が、優しく末永の頬を撫でる。普段の強がりでかっこつけたがりの学はいない。 末永が抱くたびに、少しずつむきだしになっていく甘えたで寂しがりの学は、タガが外れるとこうも幼児のようになる。本能が全面に出るのだ。雄なのに腹に受け入れた性器で雌にさせられる。そしたらもう、カッコつける必要なんてないのだから。 「かわいいな、学。嬉しいよ、俺の手てこんなふうになって…」 「ふぁ、っ…ぉく…こつこつして…もっと、きもちぃの…してぇ…っ…」 「ああ、ほんとに…っ、質が悪い…!!」 バツン!!と勢いよく腰を打ち付けた。強い衝撃とともに奥深くまで性器を捩じ込められ、学が息を詰めた。開ききった奥に先端を含ませる。じゅぱじゅぱと強く吸い付いてくる結腸に末永の腰は震え、そのままコンドームの吹き溜まりにぶしりと精液を吐き出した。 「っあ、でて、る…はふ…っ…よ、へぇ…せーし、でてぅ…っ…」 「くそ、誤射した。抜くぞ。まだ、足りない。」 「ぁ、っ…」 末永の性器がぐぽんとぬける。学に見せつけるようにしてコンドームを外すと、べしゃりと床に落とした。普段の真面目な末永の姿はもういない。 その黒い瞳の奥には欲が垣間見え、まるで飢えた狼のような剣呑な雰囲気を宿す。 「んぁ、…っ…」 ぞくりと震えた学が、薄く口を開く。その濡れた赤い舌を見た末永は、褒めるようにそっと頬を撫でたあと、その舌の上に己の精液をまとった性器を擦り付けた。 「待てだ。まだ含むな、唾液を口に貯めろ。」 「っ、ぁふ…ぁ、」 「やらしいな学、そうだ、それでいい。」 「んん…っ…ぢゅ、っ…ンぐ、…っ…」 ひくひくと蕾を収縮させながら、口端から溢れるほど唾液を溜めた学が褒められ嬉しそうに目を細める。末永が両手でそっと顔を包むと、ゆっくりとその唾液を溜めた咥内へと性器を含ませる。 じゅるり、と端ない音を立てながら溢れた唾液を啜る。性器を締め付けるような舌の動きが心地良い。学は、その先端にまとわりつくゴムの匂いに眉をひそめながらも、その濃厚な精液の残滓を舌で掬っては飲み下し、ごくりと喉を鳴らして喜んだ。 ふに、と小さな手で末永の袋をやわやわと揉むと、口端を広げるようにして性器が膨らむ。学を支配するような目つきで見つめてくるものだから、学は嬉しくてフルリと身を震わした。 「飲み込め」 「ん゛、ぶ…っ…ごっ、…」 学の首元をつつっ、と撫でた後の事だった。甘く腰に響くような一言を言うと、その太い性器をぐっと喉の奥に含ませ、どぷりと精嚢で作られたばかりの精液を流し込む。 口の中の苦味に涙が滲むが、学はこの瞬間が好きだった。 名家の家元だ。この男の隣に立ちたいと思う奴らが欲しがる精液を、全て学が飲み込むのだ。 一滴も誰にもやるものか。そう思いながら、苦く飲みづらいそれを喉を鳴らしてごくりと飲み込む。 舌と性器を、粘度の高い白濁混じりの唾液の糸で繋ぎながら口から離すと、末永は酷く愛おしそうな目で見つめていた。これだ、この顔だ。 学が酷く満たされるのは、この末永の欲情と愛情の入り混じった瞳だった。 「よう、へぇ…っ…、えら、い?」 かぱ、と口を開いて飲み込んだよとアピールする。洋平が喜ぶこと、全部学がするから、だから、溺れて。 互いの征服欲を満たす、先にのまれるのはどちらか。ぐるる、と本能のままに喉を鳴らして犬歯を疼かせる。誰もが憧れる目の前のアルファは、紛れもなく学のものだった。

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