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気が遠く

そう言えば、前にお祭りに行ったのは拓巳とだったなぁ。 ・・・・・・その時から、なのだろうか。 僕に、好意を寄せるようになったのは。 あんな、獣のような瞳で僕を見ていたのは。 拓巳は、こんな僕にも優しかった。 唯一無二の親友と、言っていいほどに。 ・・・ううん。親友という言葉では言い表せないほどに、拓巳のことを信頼していた。 大好きだった。 それなのに。 『好きだから、襲う。だって悠眞全然気付かねーんだもん』 好きだから、襲うの。 『お前、いつの間にビッチになったんだよ』 ビッチだなんて、そんなことない。 『エッロ・・・』 ・・・信じてたのに。 いいや、僕が悪かったんだ。 僕が、拓巳のことを分かってあげられなかったから。 「はーるま」 「皐太くん・・・?」 「・・・・・今目の前にいるのは誰?」 「それは、・・皐太、くん。 どうしたの?」 「目の前にいるのが俺なら、俺のことだけ考えててよ。 悠眞、そんな暗い顔しないで、な?」 皐太は、する、っと悠眞の頬に手を伸ばし撫でた。 悠眞は目を見開き、瞼を閉ざした。 「うん、ごめんね。 前に祭りに来た時、一緒に行ったのが拓巳だったんだ」 皐太は静かに頷き、無言で続きを促した。 「祭りに来ると、どうしても拓巳のことを思い出しちゃって。 あの頃の拓巳は、本当に優しくて僕のことを大切に、考えてくれてた。 だから、どうしてあんなことしたのかなって、考えてただけ」 「ごめん。・・・悠眞に、嫌な思い出蒸し返すようなことしちゃって」 「ううん。どっちも嫌な思い出じゃないんだ。 確かに、ヤられたのは嫌だったんだけど、そのおかげで拓巳のことをもっと知れたから。 それに、お祭りも、あの頃は楽しかったから。 今も、皐太くんと来れてすごい嬉しいし楽しいんだ」 「・・・そっか」

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