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裏切り。
「好きだから、襲った。
だってさ、悠眞全然気づかねーんだもん。
鈍感にも程があるだろ?
俺がどんだけ我慢してきたと思ってんの?」
「そんなこと・・・僕、知らない」
「そこがイラつくんだって」
「っ・・・・・・だから襲うとか、本当最低」
悠眞は冷ややかな視線を向けた。
一瞬、相手はびくっとしたがすぐに毅然とした態度で見下げる。
「・・・・・・そう言えば、今、何時」
「あ?ああ、今9時」
「く、じ?嘘・・・・・」
会が終わったのが7時半だから、1時間半も経ってる。
叔父様に今すぐ、帰るって言ったのに。
もしかしたら、探しに来てくれるかもしれない。
でも、多分ここはあの店じゃない。
それよりも、僕なんかのために探しに来てくれるかなんて、わかんない。
何とかして、助けてもらうか逃げないと。
とにかく、連絡取らなくちゃ。
「・・・別に、ヤるのはいいけど、連絡しないと心配される。
僕の携帯、返して」
「ヤるのはいいとかお前いつの間にビッチになったんだよ。
まあいいけど、変な真似すんなよ?」
「そんなこと、分かってるよ」
ビッチだなんて、そんなわけないのに。
拓巳だけは、信じてたのに。
どうして。
「ほら、早くしろよ?てかメールじゃなくていいからなァ?
メールだと何言われるか分かんねェし」
「・・・分かった」
くそ。もう、どうすればいいの。
でも、取り敢えず電話しなきゃだめだ。
プルルルル、プルル・・・
「もしもし、叔父様」
「どうしたんだ?帰ってこないが・・・」
「ごめんなさい、待たせてしまって」
「後どれくらいで帰ってくる予定なんだい?」
「それが、今日は帰れなくて」
「帰れない?」
「中学から仲のいい友人達が泊めてくれるらしくて」
「・・・中学からの?悠眞、お前は中学の時・・」
気づいてくれないかな。
「はい、そうです」
「悠眞?」
「え?住所ですか?心配性ですね」
「悠眞、どうした。何かあったのか?」
「だからそうですってば」
お願い、気づいて。叔父様、助けて。
「・・・・・何かあったんだな。場所は言えないのか?」
「はい、そうです」
「今、助けに行く。お前の携帯のGPSで探るから言わなくても大丈夫だから。
安心しなさい、すぐ行くからね」
「はい、分かりました。じゃあまた明日」
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