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第12話
花火が始まるまでに夕食を近くのコンビニ弁当で済ませたのは、俺の持ち金の都合。水族館代とソコまでの交通費は、映画代とカラオケ代を大幅に越えていた。帰りの交通費を考えると贅沢は出来ない。
稜ちゃんは奢って上げると言うけど、友達に奢って貰うのはどうかと思って、俺は丁重に断った。花火大会の会場も混雑していて、場所取りが大変だと思っていたら、稜ちゃんが俺の腕を掴んで小高い堤防沿いに歩き出す。花火が始まるよと言えば、此方に穴場があると言う。
稜ちゃんはこの花火を何度か見ていて、そう言う場所を知っているらしい。俺は言われる儘稜ちゃんに付いて行ったら、人気のない場所に出て少し怖かった。
だけど、直ぐに花火が始まってそう言う気分はなくなっていた。腹に響く音は盛大で、鼓膜を揺るがす音も凄かった。七色に光る炎は幼い頃に見た花火とは全く違っていて、
「稜ちゃん、凄いキレー♪」
俺はそう言って無意識に稜ちゃんの腕を引っ張っていた。背中に担いでいた大きなじんべいザメのぬいぐるみの事も忘れて、花火が打ち上がる度に稜ちゃんの腕を引っ張る。花火が放つ光線が稜ちゃんの横顔を煌々と照らした。
ドキッとする男前な顔に思わず見とれてしまっていたら、不意に稜ちゃんの顔が俺の顔を覆って来た。何?と俺が瞬く間に稜ちゃんの顔が俺から離れて行く。
俺が稜ちゃんにキスされたと理解した時には俺の身体はへにゃりとなっていて、その場に座り込んでしまっていた。
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