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第7話
☆帰宅、そして姉☆
あれから俺は全力疾走して自分の家まで帰って来た。
バタンと玄関のドアを閉めて息を整える。
ひんやりと扉の冷たさを背中で感じつつ、息も整えながら自分の両手を見る。
さっきの金髪の男といる時は手が震えてるのを隠すためにずっと手を握っていたのだ。
強く握っていたからか爪の後もはっきりついていて手のひらは真っ赤だった。
まっ、これでも結構イケメン嫌いな俺からしたら耐えた方である。
普段ならもっと酷い拒否反応が起こる位だ。
…自慢じゃないけど。
あんな天然産のイケメン空気製造機に対面するなんて思っても無かった。
今度から女装した姿であの道を通るのは難しいそうだ。
あれなんか俺が今後の未来、女装癖あって常にそんなことをしてるみたいじゃないかー。
やっだー。ぼかぁそんなこったぁいたしませんぜ。
そんなことを考えているうちにだいぶ息を整えられた。
それと同時にパタパタとスリッパの音が近くに聞こえてくる。
「おかえりー」
「ただいま」
スリッパの音を出していたのは井上 雪奈(せつな)だ。
俺の姉で社会人。
年齢は…言ったら俺の明日がなくなる。
外見はこれといっていいほど特徴が無い一般人。
いつもなら髪を結んでいるが休日と言うこともあって下ろしていた。
昔の髪型はボブが多かったけれど社会人になってからは時間がないからと髪の毛を伸ばし始めて、現在では胸の近くまである。
「あれ、ケーキは?」
そんな姉がお玉片手に黒髪を揺らしつつ俺に尋ねてきた。
「…買える状況ではなかった」
「えっ、どういうこと?」
俺が姉のご期待に添えなかったことが気にいらなかったのか眉を潜められる。
怒ったお顔は般若のようだ!
内心で相手を罵倒して、俺は言い訳と言う名のさっきあった出来事を姉の雪奈に話した。
***
「へー、それでケーキ買ってこれなかったんだ」
雪奈が眉間に皺を寄せる。
…俺だって眉間に皺を寄せたいぐらいだ。
いや、むしろあんなことがあったのだから寄せさせろ。
この姉のせいで俺は無理矢理女装をさせられて、結果的にあんなことになったんだから。
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