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第8話
☆そもそもの始まり☆
遡ること3時間前。
日本人に与えられた週2日という数少ない休日に俺は溜めていた漫画を読み漁っていた。
「小春、今日はなんの日かわかるかしら?」
そこへドアを開けてきた、姉の一言。
はて、本日は休みですが?
あれか、祝日じゃないけど◯◯な日を当てようってクイズですか。
いや、俺の姉はそんな面倒なことをする奴だったっけ?
どういうことだ、と読んでいた漫画を閉じて、壁にかけたカレンダーを確認する。
数字ばかり並ぶ紙に一点だけ赤で丸が引かれており、日付を見てはそこでハッとした。
「雪姉の誕生日だったね」
「正解!」
姉の雪奈がカレンダーの前に立ち俺に笑顔を向ける。
…えーと、何ですか?
俺に何で貴女の手のひら見せてるの?
「…何?」
「誕生日プレゼントは?」
あっ、しまった…。
「……まだ買ってない。」
まずい。
忘れていたわけではないが、なんだかんだで俺も学生。
ここの所、テストがあったりで忙しかったのだ。
「ふーん…」
雪奈が悲しそうな顔をする。
これは俺が悪いな、言い訳なしに。
俺達兄弟は親が早くから交通事故で他界してしまい、家族は俺と雪奈しかいない。
そんな俺達にとって誕生日は大事なイベントなのだ。
「ごめん、忘れてたわけではない。只、俺も忙しかったから買えなかった」
「…ごめんね、わかるよ。でもお姉ちゃんは言い訳は聞きたくないな。小春も忙しかったのは知ってる。だけれど、お姉ちゃんこれでも結構楽しみしてたんだ」
「うん」
それはわかってる。
本当に申しわけないと思ってる。
雪奈から一度視線を外して時計を確認すると、午後18時。
1日はまだ終えてないし、これから買いに行っても十分間に合う。
「雪姉、今から誕生日プレゼント買ってくるから待ってて。何がいい?」
俺が雪奈に言う。
でも雪奈は今の言葉を聞いてすごく晴れやかな笑顔になった。
「本当に!何でもいいの?」
「うん、学生の俺が買える程度のものであれば」
雪奈が更に笑みを深める。
「いや、ものじゃなくていいの」
「えっ?じゃあ、何がいいわけ?」
「…小春、怒らない?」
怒る?
なんで俺が悪いのに怒らないといけないのだ。
「怒らないからいって」
「やった!じゃあ、言うね…」
雪奈がニヤッと悪人顔負けの表情をする。
そう、まるで何か思いついたような……はたまた、この言葉を待っていましたとでもいうような笑顔だった。
「私、小春のこと女装させたい」
「はっ?」
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