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第10話

☆変態って怖い☆ 「いぎぁぁぁ!!」 俺は雪姉(変態)から脇腹など触られるというセクハラを受けながら着替えさせられた。 「完成〜!我ながらいい完成度だと思うわ」 「……。」 屈辱だ、不愉快だ。 甘い果実のような香りが漂う部屋という空間で俺は1人肩を抱いて溜息を吐いた。 「小春。鏡前においで」 「……見たくねぇ。」 「見・て」 「はい」 雪奈は気にすることもなく俺の手を引いて鏡の前に連れて行く。 部屋の一角に置かれた鏡は埃を被ることを嫌う雪奈によって布で覆われている。 白い布を外した雪奈は自慢げな表情でさあ、早く見なさいよ!と語っていた。 どうせ見たくも無い、と抗議したところで状況は変わらないことは理解していた。 だから諦めた俺は日に当たる鏡へと視線を移して肩を落とす。 はぁー、似合わない。 えーと、下は黒色のレーススカートで段違い、上半身の方は桜色のセーターで薄手。 ついでにロングのカツラときた。 非常に似合わないぞ、おい。 「完成度が高いとは言ったけど、小春に化粧してないから安心して。十分に可愛いわ、小春」 雪奈は腕を組んでうんうんと言った。 全然、うんとかいいとか言える状況じゃねぇよ、俺は! まず、考えてみろよ。 174cmの男が女装したらバレるに決まってるだろ。 「いや、女の子でも170cmいってる子いっぱいいるわよ。失礼ね」 あれ?俺の独り言は雪姉まで聞こえていたようだ。 まぁ、どうでもいい。 「まずだな。身長はそうかもしれないが、顔は女顔ではないだろ!」 「だからといって男顔でもないわよ」 …たしかにそうだな。 とはいえ、中性的とも言えないだろうに。 「俺の顔は平凡なんだ。よくいるような顔だから女装をしても下手な忘年会の罰ゲームみたいなものだ」 俺は鏡を見ながら言う。 そうだな、伝えやすくいうとだな、俺の顔は冴えない顔だ。 日本人らしい黒髪と少しばかり丸みを帯びた瞳は黒の絵具で塗り潰したようで。 こんなのが女装したって楽しくないぞ、笑い話にしかならない。 「あはは!忘年会ときたか。いやいや、私が見て楽しいからいいのよ。大丈夫」 おーい!そんな問題じゃない! 親指を立てるな! 「あっ、小春。ケーキ買ってきて」 「はぁっ?!この姿でかよ!」 というよりもいきなり話が変わりすぎだ。 雪姉はそんなことは気にする素振りなく力強く頷く。 「うん」 「ふざけるな嫌に決まって「小春〜?お姉ちゃんの言うこときけないの?」 「はい、いきます。直ちにいきます、お姉様」 「はい、よろしい。」 この悪魔め、最悪だ。 そう思いながら部屋と階段を駆け下り、俺は家をでた。 勿論、女装したまま。 そして俺はナンパをされた。 これが経緯だ。 実に不愉快極まりない。

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