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第11話
☆終わって掘り返す☆
玄関框に座ってヒールを脱いでいると、無理矢理に穿かされた本人がしゃがみ顔を覗き込む。
「な、なに」
姉とはいえ距離の近さに顔を遠ざけた。
クスりと小さく笑ったのも一瞬で、静かな顔で俺を見る。
時折、不思議なものね…と呟き、視線を逸らした後に人差し指で頰を突いてきた。
「んぐっ」
「いやー、でもさー、小春がナンパされたって話を聞くとやっぱり可愛いのね」
「何いってんの?!ありえないこと言うなよ!」
さっきの表情はどこへやら。
雪姉は大口を開けて笑い出すから俺は発言と合わせて二重に驚く。
「いや、ありえないわけではないでしょ。現にナンパされたわけだし」
「……ナンパだったのか、あれ」
いや、誘い方からしたらナンパに該当するのか。
仮にナンパをされたにはされたが、あれは何かの間違いだ。
あいつら全員174cmの女がいるとでも…あ、いるわ。
全国の高身長女子の皆さんごめんなさい。
というか、この辺りにいるわけがないから。
だから俺を女と間違うはずがない。
あいつら全員纏めて一回眼科いけ。
「んー、姉である私が言っちゃ悪いけど、小春の顔は綺麗ってわけではないから美人とは言えないじゃん」
おい、結構傷つくこというな雪姉。
事実だけど!
はっきり言うとそれは雪奈に対してもブーメランなんだかんな。
それを、本人に言うと「世の中は不平等よね」で終わらせた。
女子世界という闇の世を生きた彼女に一体何があったのかは聞かないことにしよう。
「だからといって可愛いけど可愛い顔はしていない」
矛盾している上に、傷を抉ってくる。
さては、さっきの発言に対して凄い怒ってるな。
事実じゃないか。
まぁ、その言い分は知ってるけど!
はっきり言うけどそr(以下略)
「要するに、小春はどちらにも属さない平凡な顔ってことね!」
もう何も言わんし、傷つかないぞ。
それは分かってることだ。
俺は平凡なのだ、取り柄もない。
知ってる、認めてる。
でも、身内に面と向かって言われるのは傷つくな。
…友達に言われても傷つくけど。
「まぁ、そんな傷ついた顔しないで!私は小春のこと可愛いって思ってるから!」
「…あんまり嬉しくない。」
「そんなこと言わないでって!」
本当なんなんだ、この姉。
頰の次に叩き始めた肩がとてつもなく痛い。
「後、私…。」
まだ言うか!
「小春のこと助けたイケメンも気になるな」
一番触れたくないこと言うな!
そして掘り返してくるなよ…。
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