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第14話
☆我が幼馴染様☆
玄関を出た俺は家の前だというのにも関わらず、少し背を伸ばした。
肘と背骨がパキパキ鳴るから気持ちがいい。
んあっ、と言ってから正面を向けば道路に立っている男が不思議そうに首を傾げて「おはよう」といった。
「おはよう」
その男へと俺も挨拶を返す。
この挨拶した男は小林 透(こばやし とおる)。
俺と彼の間柄は幼馴染であり親友。
家は隣同士のためお互い交流が多い。
まぁ、俺の親が他界してしまってから透の両親が俺達兄弟を気にかけてくれて世話してくれた。
実際、姉が社会人なので家を空けることが多く、俺は透の家に泊まりにいくことが多い。
そういったことから透の両親とは仲がいいし、透の両親は『家族』として接してくれてる。
本当に透の両親と透には感謝しきれない。
「朝から何してるの?」
「いやー、少しばかり身体を伸ばしたくて」
「だからといって俺の目の前でやらなくても良くない?」
「えー、別にいいじゃん。」
「いや、まぁいいけどさ。それにしても小春、昨日の夜に女装してただろ?しかもナンパにあったらしいな」
透が俺を笑いながら言う。
「な、なんでそんなこと知ってんだよ!」
「昨日、小春が全力疾走して家の中に駆け込む様子を部屋から見かけたもんだから雪奈さんに聞いた」
おい、雪姉なんてことを透に教えたのだ。
そしてなんて所を見られてるんだ俺…。
絶望のあまり道端で頭を抱える。
「てか、よく俺だってわかったな…一応女装してたんだけどな」
「いや、小春の女装姿は昔から見てるからわかるだけ」
これが幼馴染ってやつか。
お前だけだよ騙されないやつは。
「しかし小春も災難だな。ナンパに合うとか、でもお前らしいといったらお前らしいが。俺ならそんなこと合わないし」
おい、笑いながらそんなこと言うんじゃない。
こっちは大変だったんだ!
でもたしかに透が女装してもナンパはされないな。
透は俺より身長が高くガタイもいい方。
あっ、ムキムキじゃないからな!
いいといっても程よく筋肉がついている。
そして茶髪で体育系のように見えるのに汗臭さなんてない、むしろ爽やか系?
顔も整っている方。
要するに彼もイケメンだ。
そして地味にモテる。
でも俺はこの透というイケメンだけは触ったり距離が近くでも拒否反応が起こらないし、イケメンへの拒絶反応を示さない唯一の存在なのだ。
なんで拒否反応が起こらないのかはわからない。
そして俺が学校でイケメンと遭遇して拒否反応が起こった際、透に触ると症状が落ち着くという効果がある。
透は俺にとって素晴らしい存在、回復係。
だから俺は学校も透がいるから登校できる。
あっ、いっておくが俺達の間に恋愛感情は無い。
お互い友達、親友としか思ってない。
というか、俺達はそっち系ではなく普通に女の子が好きだ。
そこは勘違いしないでいただきたい。
「透が女装したらそれこそ笑い話だな。てかナンパされたらその男を見せてくれ」
「ははは、いいぞ。ぜひ見てくれ」
「うわっ、そこは冗談でも断ってくれよ!」
とまぁ、こいつとは普段からこんな感じで話してる。
やっぱり長年一緒にいる分気が楽でいい。
こんな会話を続けているうちに学校に着いた。
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